新竹・苗栗
読み しんちく・びょうりつ現地音 シンジュー・ミャオリー拼音 Xīnzhú, Miáolì中国語 新竹·苗栗別名 新竹県、苗栗県、北埔、峨眉、頭份、頭屋、三湾、桃竹苗、東方美人、膨風茶、白毫烏龍、Hsinchu、Miaoli
台湾北西部、新竹県と苗栗県にまたがる客家の丘陵地で、東方美人茶(膨風茶・白毫烏龍)の産地。小緑葉蝉に噛まれた芽だけを摘んで重く酸化させる特異な製法で、北埔では膨風茶、峨眉では東方美人茶、苗栗では番荘烏龍と呼び分ける。
台湾北西部、新竹県から苗栗県にかけての丘陵地で、客家の人々が多く住む土地です。桃園を加えて桃竹苗地区とも呼ばれ、標高が低く夏は高温多湿になります。東方美人茶の二大産地のひとつで(もうひとつは新北市の石碇・坪林)、新竹県の北埔郷と峨眉郷、苗栗県の頭份市・頭屋郷・三湾郷が中心です。
東方美人茶
東方美人茶は台湾の烏龍茶の中で最も酸化が重い茶で、台湾農業部の分類では部分発酵茶のうちの重発酵に当たります。品種は青心大冇(せいしんだいむ)が主で、小緑葉蝉(ウンカの一種)に汁を吸われた若い芽だけを摘んで作ります。萎凋を長く、揉捻をしっかり行い、釜炒りのあと湿らせた布で包んで蒸らしてから形を整えるのが独特の製法です。仕上がった葉は白・緑・黄・紅・褐の五色が混じって花のように見え、上等なものほど白い産毛の芽が目立ちます。水色は橙紅色で、蜜や熟した果実のような香りがします。
小緑葉蝉と蜜香
東方美人の蜜香は虫がいなければ生まれません。5月から7月、とくに芒種の前後に活動する小緑葉蝉が芽の汁を吸うと、茶樹は防御反応として特定の香り成分(テルペン類など)を作り、それが製茶を経て蜜のような香りになります。虫に噛まれていない葉で同じ製法をとっても蜜香は出ません。このため農薬は使えず、茶園には虫がいることが前提になります。
夏の高温多湿は酵素の働きを活発にするため、重い酸化に向いています。近年、高山茶の産地で東方美人を試作する動きもありますが、原料の葉も気候も違うため簡単にはいかない、という報告があります。
名前の伝承
東方美人茶は日本統治期に生まれたとされ、1932年ごろ北埔の茶農家が虫害にあった葉で茶を作ったところ、蜜のような香りが出て高値で売れたという話が伝えられています。虫に食われた茶が高く売れたと村人に話しても「膨風」(ほら吹き)と言われた、というのが膨風茶の名前の由来で、イギリスの女王が称賛して東方美人と名付けたという伝承もあります。いずれも伝承で、史料上の裏付けはありません。産地によって呼び名が違い、北埔では膨風茶、峨眉では東方美人茶、苗栗では古い呼び名の番荘烏龍が使われ、芽の産毛から白毫烏龍とも呼ばれます。
味の性格
東方美人は香りが華やかな一方で、味の厚み(ボディ)は軽めなのが一貫した性格で、産地の土壌によると考えられています。淹れるときは少し冷ました湯で香りを立たせる人が多く、紅茶に近い感覚で楽しめます。
この産地の茶葉
- 東方美人台湾新竹・苗栗の丘陵で作られる、酸化の最も重い烏龍茶。小緑葉蝉(ウンカ)に汁を吸われた芽葉だけを夏に摘み、蜜と熟した果実のような香りに仕上げる。白毫烏龍、膨風茶とも呼ばれ、イギリスの女王が名付けたという伝承がある。
- 蜜香紅茶台湾で、小緑葉蝉(ウンカ)に汁を吸われた芽葉を紅茶に仕立てたもの。東方美人と同じ仕組みで蜜とマスカットのような蜜香が生まれ、新竹・苗栗のほか花蓮の瑞穂が産地として知られる。虫まかせの原料ゆえ製茶の出来にばらつきが大きい。
参考リンク
- 農業知識入口網 茶葉主題館: 東方美人茶(台湾農業部) — 品種(青心大冇)、小緑葉蝉、製法、外観、産地の範囲
- 科技大觀園: 「著涎」之美:東方美人茶與小綠葉蟬 — 小緑葉蝉の吸汁で香りが生まれる仕組み
- 國家文化記憶庫: 東方美人茶起源與特性 — 起源の伝承と名前の由来
- 消観茶論 第52回: 高山産東方美人茶は定着するか? — 二大産地(新北市と桃竹苗)、夏の高温多湿が製茶に向くこと