用語辞典
146 語 / 読みは音読みを主とし、現地音・拼音も併記しています。
あ
- 渥堆あくたい製法殺青・揉捻した茶葉に水を打って積み上げ、温度と湿度を保ちながら微生物の働きで発酵させる黒茶の工程。六大茶類で唯一、酵素の酸化ではなく微生物を使い、渋みが減って味が丸くなる。普洱熟茶はこの技術で1970年代に生まれた。
- 一芽二葉いちがにょう等級・格付け茶を摘むときの基準で、枝の先端の芽とその下の二枚の葉をひと組で摘むことを言い、一芯二葉とも書く。緑茶・紅茶・普洱茶の標準的な摘み方で、芽だけや一芽三葉など摘む位置で茶の性格が変わり、烏龍茶は葉が成熟してから三〜四葉で摘む。
- 萎凋いちょう製法摘んだ葉を薄く広げて置き、水分を減らして柔らかく萎れさせる、白茶・烏龍茶・紅茶の最初の工程。脱水で細胞膜が緩んで酵素が香りの前駆体と出会い、花や果実のような香りの土台がここで作られる。緑茶では通常行わず、摘んですぐ殺青する。
- 窨制いんせい製法茶葉と生花を層にして密閉し、花の香りを茶葉に吸わせる花茶の製法で、茉莉花茶が代表。一晩置いて翌朝花を取り除き乾かす作業を一窨と数え、高級品は数回から十回近く繰り返す。回数だけでなく茶葉と花の質が品質を決め、本来は花を残さない。
- ウンカうんかその他茶園でよく見られる代表的な害虫で、若い芽の汁を吸う淡い緑色のヨコバイの仲間の小さな虫。正確には小緑葉蝉だが日本と台湾の茶業ではこう呼び、吸われた茶樹が防御反応で作る成分が蜜香のもとになる。東方美人や蜜香紅茶はこの虫なしには作れない。
- 雲南大葉種うんなんだいようしゅ品種雲南省の茶区に分布する喬木型・小喬木型で葉の大きな茶樹品種の総称で、普洱茶の原料。単一の品種ではなく国家級良種と各地の在来集団を含む呼び名で、国家標準が普洱茶の原料と定める。ポリフェノールが多く、力強い味と長い余韻が熟成や渥堆に向く。
- 栄西と喫茶養生記えいさいときっさようじょうき歴史・人物・文献鎌倉時代の禅僧で、宋に二度渡って禅を学び、茶の種と飲み方を持ち帰って広めたことから日本の茶祖と呼ばれる。1211年の喫茶養生記は日本に現存する最古の茶の専門書で、茶を養生の仙薬と位置づけ、宋で見た製法と飲み方を記す。
- 黄金桂おうごんけい品種福建省安渓の虎邱鎮原産の茶樹品種で、品種名は黄旦、この品種で作った烏龍茶の名が黄金桂。鉄観音より芽が早く香りが高い早生種で、金木犀を思わせる華やかな香りの軽やかな烏龍茶になる。
- 温杯おんぱい淹れ方茶を淹れる前に蓋碗や茶壺、茶海、茶杯に湯を通して温めることで、工夫茶の最初の所作。器の温度が下がらないので抽出の温度が安定し、温まった蓋碗に乾いた茶葉を入れて香りを嗅ぐ所作にもつながる。壺なら温壺、まとめて温杯燙壺とも言う。
か
- 回甘かいかん味・香り口に含んだときは苦渋くても、飲み込んだあとに口の中へじわりと甘みが戻ってくる感覚を表す評価語。国家標準の審査用語では苦みが甘みに転じる「苦能回甘」とともに定義され、生津・喉韻とそろうと質の高い茶とされる。
- 蓋置がいち茶器茶壺や蓋碗、湯沸かしの蓋を外したときに置いておくための小さな台で、蓋の内側の雫で卓を濡らさず、蓋を清潔に保つ。日本の茶道の道具から名前と形を借りて台湾の乾泡に入り、鉄壺の流行とともに大陸にも広まった。必ず要る道具ではない。
- 掛杯香かいはいこう味・香り茶を飲み干したあとの杯の内側や蓋碗の蓋の裏に残る香りで、鳳凰単叢や岩茶など烏龍茶の評価によく使う語。茶湯の香りとは別に評価し、冷めてからも甘い香りが残る冷香の長さが上質な茶の目印とされる。
- 蓋碗がいわん茶器蓋、碗、托の三つでひと組になった茶器で、茶葉を入れて湯を注ぎ、蓋をずらして葉を押さえながら注ぎ出す。湯のみにも急須の代わりにも使え、口が広く葉の開きや水色、蓋の香りを確かめやすいので、産地で茶を評価するときの器でもある。
- 花香・果香・火香かこう・かこう・かこう味・香り茶の香りを生まれ方で大まかに分ける基本の言葉で、花香は做青や萎凋、果香は深い酸化や熟成、火香は焙煎や炒りで生まれる。産地や製法ごとに典型の型があり、香りを知ると茶の作り方の見当がつく。
- カフェインかふぇいんその他茶に含まれる覚醒作用のある成分で、乾燥した茶葉の2〜4パーセントを占め、若い芽ほど多く成熟した葉や茎には少ない。量は茶の種類より原料の若さと淹れ方で決まり、洗茶で抜けるという説は効果が限られる。
- 岩韻がんいん味・香り武夷岩茶に特有とされる風味と余韻で、岩の骨格と花の香りを意味する岩骨花香とも言う。国家標準が武夷岩茶の定義に含める言葉で、ミネラル感のある厚み、焙煎の奥から立つ花の香り、喉に残る余韻をまとめて指す。正岩の茶ほど強いとされる。
- 観音韻かんのんいん味・香り安渓鉄観音に固有とされる、蘭のような香りと飲み込んだあとに喉や口に残る余韻をまとめて表す評価語。品種・産地・製法の三つの香りが重なって生まれるとされ、国家標準の鉄観音の品質要求にも音韻の語が入る。
- 乾泡と湿泡かんほうとしっぽう淹れ方茶を淹れるときの卓の作り方の二通りで、湯を流せる茶盤の上で淹れる湿泡と、茶盤を使わず卓を乾いたまま保つ乾泡。湿泡は潮州工夫茶以来の形で壺の温度を保ちやすく、乾泡は1980年代の台湾で広まり、茶席を布や花で整える流れを生んだ。
- 奇丹きたん品種武夷山の茶樹品種で、大紅袍の母樹の一部と遺伝的に同一であることが近年確かめられ、品種名「大紅袍」として認定された。この品種だけで作った岩茶を純種大紅袍と呼び、複数の品種を配合した商品大紅袍と区別する。
- 金萱きんせん品種台湾の茶業改良場が育成し1981年に命名した茶樹品種で、正式名は台茶12号、収量が多く育てやすい中生種。ミルクや奶糖にたとえられる品種由来の乳香が特徴で、金萱茶の名で高山茶や凍頂烏龍の一種として広く飲まれる。
- 工夫茶四宝くふうちゃしほう茶器広東省潮州と福建南部の工夫茶に欠かせない四つの道具で、炉・湯沸かし・小さな茶壺・白磁の小杯からなる。清代に整った道具立てで、小壺で濃く淹れて熱いうちに飲む工夫茶の骨格を今も支える。
- 喉韻こういん味・香り茶を飲み込んだあとに喉のあたりへ残る爽快さや甘さ、潤いといった心地よい感覚と余韻を表す評価語。甘みに絞った回甘と違い、香りや厚みも含めた喉の余韻全体を問う言葉で、産地ごとの岩韻や観音韻もこの派生。
- 号級・印級・七子餅ごうきゅう・いんきゅう・しちしへい歴史・人物・文献普洱茶の古い餅茶を年代で区分する呼び方で、私営茶荘の号級、国営期の印級、1972年以降の七子餅茶に分かれる。いつ誰が作ったかで値段が決まり骨董品のように取引されるため、偽物が本物よりはるかに多く真贋の問題が絶えない。
- 叩手礼こうしゅれいその他茶を注いでもらったとき、指先で卓を軽く叩いて礼を返す、広東の飲茶や工夫茶の席から広まった作法。伝承では、乾隆帝に茶を注がれた従者が身分を隠すため指で叩頭したのが由来とされ、人差し指と中指で二、三回叩くのが最も普通。
- 貢茶こうちゃ歴史・人物・文献皇帝や朝廷に献上された茶で、唐代以降、宮廷が特定の産地に作らせて納めさせ、選ばれた産地は名声を得た。宋の北苑の団茶や清の西湖龍井が知られ、いまも名茶の肩書きになるが、宣伝や等級名に付く貢の字は献上の事実とは別物。
- 高冲低斟こうちゅうていしん淹れ方湯は高い位置から勢いよく注ぎ、茶は低い位置から静かに杯へ注ぐという、潮州に由来する工夫茶の注ぎ方の原則。高く注ぐと葉が回って香りが立ち、低く注ぐと香りと温度が逃げない。均等に注ぐ関公巡城と最後の一滴を分ける韓信点兵の所作が続く。
- 工夫茶こうふちゃ淹れ方広東省潮州で体系化された、小さな茶壺や蓋碗に茶葉を多めに入れ、沸騰した湯で短く抽出して何煎も飲む淹れ方。器と葉をよく温めて高温で淹れるのが核心で、製法の名前である工夫紅茶とは別の概念。
- 黄片こうへんその他大きく育って硬くなり、揉捻しても細い条にならず、仕上げの選別で製品から外された成熟した葉。外観の規格に合わないだけで味は悪くなく、普洱茶では苦渋みが少なく甘く煎持ちがよい老黄片として好んで飲む人がいる。
- 口糧茶こうりょうちゃその他中国の愛好家が、主食の米のように毎日飲む、値段が手ごろで質の安定した普段飲みの茶を指して使う言葉。有名産地の高価な茶と区別し、名前や等級より飽きずに飲めて財布に優しいことを基準にする、茶選びの現実的な物差し。
- 古樹茶こじゅちゃ等級・格付け雲南で、樹齢の高い茶樹から作った茶の呼び名で、普洱茶や白茶・紅茶の名前によく付く。何年以上という公的な基準はなく、根が深く味に厚みと余韻があるとして台地茶より高値で取引されるが、名前だけでは信じられない。
- 壺承こしょう茶器茶壺や蓋碗を載せる小さな皿や台で、壺の底の雫や注ぐときにこぼれた湯を受けて卓を濡らさない道具。潮州工夫茶の深い茶船が、湯をかけない台湾の乾泡に合わせて浅く小さくなったもので、茶盤を使わない茶席の中心になる。
- 呉理真ごりしん歴史・人物・文献伝承では前漢の時代に蒙頂山へ茶を植えたとされ、記録に残る最初の茶の栽培者として植茶始祖と呼ばれる人物。名が見える史料は後世のもので同時代の記録はなく、産地の古さを象徴する存在として読むのがよい。蒙頂山には皇茶園と祠が残る。
さ
- 蔡襄と茶録さいじょうとちゃろく歴史・人物・文献北宋の政治家・書家で、貢茶を監督して小龍団を作らせた蔡襄と、彼が著した上下二篇の短い茶書。上篇で茶の色・香・味と炙り方、碾き方、湯の見極め、点茶を、下篇で茶盞など道具を論じ、北宋中期の点茶を伝える基本史料。
- 晒青さいせい製法殺青と揉捻を終えた茶葉を日光で乾かすことで、緑茶を乾燥方法で分けた区分のひとつ。低温で乾くため酵素が一部生き残り熟成の土台になり、雲南の晒青毛茶が普洱茶の原料の条件とされる。烏龍茶や白茶では日光萎凋をこう呼ぶこともある。
- 做青さくせい製法萎凋した葉を揺すって縁に傷をつけ、静置して酸化を待つことを繰り返す、烏龍茶だけにある工程。揺すりの強さと回数、静置の時間で酸化の度合いが決まり、烏龍茶の味と香りを左右する最も重要な工程とされる。縁が赤く中央が緑の緑葉紅鑲辺はこの工程の跡。
- 殺青さっせい製法摘んだ茶葉を高温で加熱して酵素を失活させ、それ以上酸化が進まないようにする工程で、緑茶を緑茶たらしめる。加熱方法で炒青・蒸青・烘青・晒青に呼び分け、烏龍茶では做青で進めた酸化を途中で止める要の工程。白茶と紅茶にはない。
- 山韻さんいん味・香り茶の味と余韻に現れる産地の土地の性格を表す評価語で、鳳凰単叢と台湾の高山茶で使う。香りではなく飲み込んだあとに残る厚みや甘さ、余韻の長さを指し、標高の高い茶園の茶に出るとされて値段の差を説明する。
- 山場さんじょう等級・格付け茶樹が育った具体的な場所と、その土壌や微気候をまとめて指す言葉で、ワインの畑に近い概念。武夷岩茶では岩場の名で、鳳凰単叢では村の名と低山・中山・高山の標高区分で語られ、同じ品種・同じ製法でも山場が違えば別の茶として値段が変わる。
- 山頭さんとうその他雲南の普洱茶で、茶を作った山や村を指す言葉で、ワインの畑名のように山頭の名前で味と値段が語られる。清代からの古六大茶山と新中国以後の新六大茶山があり、人気の山頭は需要が生産量を超えるため周辺の茶が名前を借りて売られる。
- 色種(毛蟹・本山・梅占)しきしゅ品種安渓で、鉄観音以外の品種で作った烏龍茶をまとめて呼ぶ名前で、いまは複数の在来品種を混ぜて作る安渓の烏龍茶を指す。鉄観音より安く作れるため産地では最も日常的な烏龍茶で、日本でも焙煎したものが普段飲みの烏龍茶として売られる。
- 四季春しきしゅん品種台湾の木柵の茶園で自然交雑の実生から偶然見つかった、早生で年に何度も摘める茶樹品種。収量が多いため南投県名間郷を中心に広まり、花のような香りの軽い烏龍茶になる。流通品やドリンクスタンドの茶に広く使われる日常茶。
- 紫娟しけん品種雲南省農業科学院茶葉研究所が雲南大葉種の茶園で見つけた紫色の一株から育成した茶樹品種。芽・葉・茎がすべて紫でアントシアニンを多く含み、緑茶や生茶に仕立てると水色まで紫がかる。渋みが強く珍しさで知られ、雲南に古くからある在来の紫芽とは別物。
- 紫砂壺しさこ茶器江蘇省宜興で採れる陶土の紫砂で作る釉薬をかけない茶壺で、明代から続く茶壺の名産品。微細な気孔が香りや成分を吸って渋みを丸くするため、岩茶や普洱茶など厚みを楽しむ茶に向き、一壺一茶で使い込むほど艶が出る。製作技術は国家級無形文化遺産。
- 柿大茶しだいちゃ品種安徽省黄山区の新明一帯に伝わる在来の茶樹品種で、葉が柿の葉のように大きく厚く、緑茶の太平猴魁の原料。摘んでから硬くなるまでが長いので、大きな一芽二葉を平たく伸ばす猴魁の姿が作れ、他の品種では葉が小さく硬くなる。
- 四大茶区しだいちゃくその他中国の茶産地を気候・栽培の歴史・茶樹の型・主な茶類で江北・江南・華南・西南の四つに分けた区分。製法で分ける六大茶類に対し土地による分類で、省の境とは一致しない。同じ茶区の産地は気候や品種が似ており、知らない産地の見当をつける手がかりになる。
- 煮水器(随手泡・電陶炉・鉄壺・銀壺)しゃすいき茶器茶を淹れる湯を沸かす道具の総称で、卓上の電気ケトル、炉に載せる壺、炭の炉と砂銚に大別される。最も普及しているのは随手泡と呼ぶ小型の電気ケトルで、鉄壺や銀壺は湯の口当たりを楽しむ道具。潮州工夫茶では紅泥の炉と砂銚が工夫茶四宝の二つを占める。
- 煮茶しゃちゃ淹れ方茶葉を湯で煮出して飲む淹れ方で、唐代の陸羽が『茶経』に記した中国茶で最も古い飲み方。いまは黒茶や数年寝かせた白茶、普洱熟茶を煮る習慣が広まり、短い抽出では出ない多糖類が溶けて甘くとろりとする。渋い緑茶や清香型の烏龍茶は向かない。
- 十大名茶じゅうだいめいちゃその他中国の有名な茶を10種選んで並べた呼び名で、国や業界団体が定めた公式の一覧はない。緑茶を中心によく引かれる組み合わせはあるが、時代や媒体で顔ぶれが入れ替わる。史料で確かめられる公的な名茶の評選は1982年の全国名茶評選会が最初。
- 揉捻じゅうねん製法葉を押しつけながら転がして細胞に細かな傷をつけ、成分が溶け出しやすくすると同時に茶葉の形を作る工程。白茶を除くすべての茶類にあり、強く揉めば早く出て煎が続かず、弱く揉めば煎を重ねられる。烏龍茶を球状にする包揉もその一種。
- 主人杯しゅじんはい茶器茶席の主人が自分専用に使う品茗杯で、客に出す揃いの白磁の杯とは別に材質や形にこだわった一客。使い込むほど変わる建盞や紫砂、柴焼など来歴を語れる杯が好まれる。古い工夫茶にはなく、2010年代に中国大陸で茶器の趣味が広がるなかで定着した習慣。
- 春茶と秋茶しゅんちゃとしゅうちゃ等級・格付け茶を摘んだ季節による区分で、春茶、夏茶、秋茶、冬茶と呼び分け、芽の成分と気候の違いで性格と値段が変わる。冬に養分を蓄えた春茶は味が厚く緑茶や普洱茶で最上とされ、夏茶は渋く、秋茶は香りが高い。台湾の高山茶では春と冬が二大シーズン。
- 樟香・参香しょうこう・さんこう味・香り熟成した普洱茶の陳香を細かく言い分ける愛好家の語彙で、国家標準の審査用語に定義はない。樟香はクスノキを思わせる木の香りで古い生茶に、参香は朝鮮人参のような薬の香りで老熟茶に出るとされる。カビ臭や湿った匂いは陳香ではなく保存の失敗。
- 条索じょうさく味・香り乾いた茶葉の形を表す官能審査の用語で、揉捻でよじれた棒状の茶葉を指し、外形の評価に使う。締まりやそろい、艶を見るほか、条索状・球状・扁形など製法で決まる形の呼び分けにも使う。外形は見た目の評価で、味や余韻とは別。
- 炒青・烘青・蒸青しょうせい・こうせい・じょうせい製法緑茶を殺青と乾燥の方法で分ける呼び方で、国家標準は炒青、烘青、晒青、蒸青の四つに区分する。釜で炒る炒青は炒り香、火で焙る烘青は葉の香りと姿、蒸気の蒸青は青い香りとうまみが残り、龍井は炒青、日本の煎茶は蒸青。
- 上投法じょうとうほう淹れ方緑茶をガラスのコップなどで淹れるとき、湯を先に注いでから茶葉を入れる方法で、産毛の多い繊細な芽の茶に向く。湯を半分注いで葉を入れる中投法、葉を先に入れる下投法と使い分け、明代の『茶録』に季節ごとの使い分けが記されている。
- 神農しんのう歴史・人物・文献中国の伝説上の帝王で、農耕と医薬の祖とされ、茶を最初に飲んだ人物として茶祖と呼ばれる。伝承では百草を嘗めて毒に当たり茶の葉で解毒したといい、唐の『茶経』が茶を飲むことは神農氏に始まると書いて定着したが、史実ではない。
- 審評しんぴょう味・香り茶の品質を外形・湯色・香気・滋味・葉底の五因子で採点する官能審査で、中国では国家標準が方法と器具を定める。産地の品評会や等級の判定、取引の検品に使われ、日常より濃く長く淹れるのは欠点を見つけやすくするため。
- 水盂(建水・渣方)すいう(けんすい・さほう)茶器温杯や洗茶の湯、飲み残しの茶を捨てるための器で、乾泡では茶盤の代わりに卓の脇に置く。水盂、渣方、水方など呼び名が多く、日本の茶道のこぼしにならって建水とも呼ぶ。客の正面には置かないのが作法。
- 翠玉すいぎょく品種台湾の茶業改良場が育成した灌木型小葉種の茶樹品種で、正式名は台茶13号、金萱と同時に命名された。蘭や野生の生姜の花にたとえられる花の香りが特徴で、清香型の球状烏龍茶や包種茶に仕立てて翠玉茶の名で売られる。
- 水色すいしょく味・香り淹れた茶の液の色で、中国語では湯色と言い、外形や香気と並ぶ官能審査の五因子のひとつ。色の系統は酸化の程度で決まり、緑茶の黄緑から紅茶の紅まで茶類ごとの基準色がある。系統より、澄んで明るいかどうかが品質の目印として重視される。
- 水仙すいせん品種福建省北部の建陽が原産とされる小喬木型の晩生の茶樹品種で、武夷岩茶の主力品種のひとつ。品種名がそのまま烏龍茶の名にもなり、産地と焙煎の程度で性格が大きく違う。味に厚みがあり、樹齢の高い木から作る老欉水仙が高く評価される。
- 正岩せいがん等級・格付け武夷岩茶を産地で格付けする慣用の呼び方の最上位で、武夷山の景区内の岩山の中心部で育った茶。礫の多い土壌が岩韻を生むとされ、半岩、洲茶、外山と下位が続く。現行の国家標準は区分を設けず公式な等級ではないため、表示は売り手の説明に頼る。
- 清香型と濃香型せいこうがたとのうこうがた味・香り烏龍茶を焙煎と酸化の軽重で分ける呼び方で、安渓鉄観音の国家標準が定めた区分がいまは烏龍茶全般で使われる。清香型は酸化を浅く焙煎を軽くして緑の葉色と花の香りを残した現代的な型、濃香型は焙煎を重ねて甘さと厚みを出した伝統に近い型。
- 正山堂せいざんどう歴史・人物・文献福建省武夷山の桐木で代々紅茶を作ってきた江氏の茶業会社と、同社が立ち上げた高級紅茶ブランドの名前。芽だけの紅茶の金駿眉を生み出して国内の高級紅茶ブームを起こし、その製法を標準化して他省の産地と組んだ駿眉系の紅茶を広げている。
- 生津せいしん味・香り茶を飲んだあとに口の中が潤い、両頬や舌の下から唾液が湧いてくる感覚を表す評価語。ほぼ常に回甘とセットで「回甘生津」と言われ、普洱生茶や岩茶のように飲んだあとの変化を楽しむ茶で品質の条件になる。
- 青心烏龍せいしんうーろん品種台湾で最も広く栽培される茶樹品種で、福建の矮脚烏龍に由来し、単に青心や種仔とも呼ばれる。芽の出る遅い晩生種で栽培は難しいが製茶の品質が高く、凍頂烏龍茶をはじめ台湾の主要な烏龍茶の主力品種。
- 青心大冇せいしんだいむ品種台湾北部で古くから栽培される茶樹品種で、日本統治期に四大品種のひとつとして普及した。芽が太く産毛が多く、夏にウンカの吸汁を受けた芽葉で作る東方美人茶の主力品種で、白い芽が残る白毫烏龍の名の由来にもなる。
- 精製せいせい製法茶園で乾燥まで終えた毛茶を篩い分け・風選・茎取り・拼配・火入れで整えて製品にする工程。摘採から乾燥までの初製と対をなし、日本茶の荒茶と仕上げの関係に当たる。等級や形のそろいだけでなく、茎の扱いや火入れで味も変わる。
- 青味・焦味せいみ・しょうみ味・香り茶の欠点を表す言葉で、青味は殺青や做青が足りず青臭さが残った状態、焦味は釜温や焙煎が強すぎて焦げた状態。国家標準の審査は欠点を見つけて減点する方式で、煙味や酸味、水味、カビ臭も含め、香りから製茶や保存のどこで失敗したかが分かる。
- 政和大白茶せいわだいはくちゃ品種福建省北部、政和県の鉄山郷が原産の茶樹品種で、政和白茶の主な原料になる国家級良種。福鼎大白茶より芽が出るのが遅い晩生種で、小喬木型の大葉種。室内萎凋を長く行う政和の伝統もあって、福鼎産の白茶よりやや濃く落ち着いた性格になると言われる。
- 雪片せっぺん等級・格付け鳳凰単叢の冬茶で、立冬前後の秋の終わりから初冬に摘む、産地で一年の最後の一季と言われる茶。寒さの中でゆっくり育つため一年で最も香りが高く渋みが少ないが、春茶より軽く煎持ちも及ばない。手ごろなことが多く、鳳凰単叢の入口になりやすい。
- 洗茶せんちゃ淹れ方茶葉に湯を注いで数秒から十数秒ですぐに捨てる手順で、中国語では潤茶や醒茶とも呼ぶ。名前は洗うだが目的は汚れ落としではなく、葉を温めて開かせ1煎目から香りを出すこと。球状の烏龍茶や緊圧茶で行い、緑茶や芽だけの茶では行わない。
- 煎と出湯せんとしゅっとう淹れ方蓋碗や茶壺で淹れた茶を杯や茶海に注ぎ出すことを出湯と言い、一回の抽出を一泡、日本語では一煎と数える。工夫茶では最後の一滴まで注ぎ切って葉を湯に残さず、煎ごとに時間を変えて味の変化を楽しむ。わざと葉を浸けたまま濃く出すことは坐杯と言う。
- 走水そうすい製法烏龍茶の萎凋と做青で、葉の水分が茎から葉へ、内側から表面へ移動して抜けていくこと。水分の移動が均一に進むと酸化と香りの変化が同時に進んで青臭さが抜けるため、烏龍茶の製茶の要とされる。茎に水が残る走水不良では青臭さや渋みが残る。
- 倉味そうみ味・香り普洱茶や黒茶を倉庫で熟成させたときに茶に付く、湿った倉庫やカビ、土を思わせる匂い。高温多湿の湿倉で速く熟成させた茶に出やすく、乾倉の茶にはほとんどない。軽い倉味は風に当てる退倉で抜けるが、強いカビ臭は保存の失敗で欠点になる。
た
- 大観茶論たいかんちゃろん歴史・人物・文献北宋の皇帝徽宗が著した茶の書で、皇帝自身が書いた唯一の茶書として産地、製法、道具、点茶を20篇に記す。団茶を粉にして湯を注ぎ茶筅で泡立てる点茶の手順を詳しく記し、日本の抹茶の源流を知る史料でもある。
- 台地茶だいちちゃ等級・格付け雲南で、山の斜面を段々畑状に整えた茶園に密植し、低く刈り込んだ茶樹から作る茶の呼び名。1980年代以降に広がり、収量が多く雲南の茶の大半を占める。古樹茶と対比して安価な茶の代名詞にされるが、熟茶の原料や名品のブレンドも多くは台地茶。
- 耐泡たいほう味・香り煎を重ねても味と香りが続くことで、日本語の煎持ちに当たり、何煎目まで飲めるかで表す評価語。揉捻の強さ、葉の成熟度、形や焙煎、淹れ方で決まり、普洱茶や烏龍茶で重視されるが、煎数が多いほど良い茶というわけではない。
- 単株・老欉たんかぶ・ろうそう等級・格付け一本の木だけから摘んで作った茶が単株、樹齢の高い木から作った茶が老欉で、鳳凰単叢と武夷岩茶の水仙で使う言葉。木の個性と樹齢が味を決めるという考えで、量が少なく余韻が深いとして高く取引されるが、何年から老欉かの基準はない。
- 団茶だんちゃ歴史・人物・文献蒸した茶葉を搗いて型に入れ、固めて乾かした固形の茶で、唐代の餅茶や宋代の貢茶を指す歴史上の呼び名。炙って粉にし、煮たり点てたりして飲んだ。明の洪武帝が1391年に献上を廃止して散茶が主流になり、固形茶は黒茶の緊圧茶に残る。
- 茶荷ちゃか茶器乾いた茶葉を載せて客に見せ、そのまま蓋碗や茶壺の口へ流し込むための、片側が注ぎ口状に絞られた小さな皿。淹れる前に葉の姿と乾いた香りを客に確かめてもらう賞茶に使う。台湾の茶芸で整えられた道具で、名は蓮の葉に似た形から。
- 茶海ちゃかい茶器蓋碗や茶壺から注ぎ出した茶をいったん受けて濃さを均一にし、茶杯に注ぎ分けるための片口の器。公道杯や茶盅とも呼ぶ。台湾の茶芸で考案されて大陸に広まった新しい道具で、潮州の伝統的な工夫茶にはない。
- 茶外茶ちゃがいちゃその他茶樹の葉を使っていないのに茶と呼ばれる飲み物の総称で、中国では代用茶とも言い、日本のハーブティーや麦茶に当たる。菊花茶や苦丁茶などがあり、六大茶類には入らないが茶館のメニューには必ず並び、多くはカフェインを含まない。
- 茶気ちゃき味・香り茶を飲んだときに味や香りではなく体に現れる感覚で、体が温まる、汗ばむ、気分が高揚するなどの変化を言う。普洱生茶や岩茶の力強さを表す言葉として愛好家が使うが、国家標準の審査用語にはなく個人差が大きい。
- 茶経ちゃきょう歴史・人物・文献唐代の陸羽が著した世界で最も古い茶の専門書で、三巻十章に茶の性質、製法、道具、煮方、飲み方、産地をまとめる。蒸して固めた団茶を炙って煮る飲み方を伝え、茶を道具と作法を持つ文化として初めて書いた本で、後世の茶書の型になった。
- 茶巾ちゃきん茶器茶壺や茶海の底に付いた水滴を取り、注ぎ口の垂れや卓にこぼれた茶を拭くための、手元に置く小さな布。茶器だけに使い、麻や綿の吸水性のよい生地で茶渋が目立たない深い色が好まれる。乾泡では畳んで卓に敷き壺承の代わりにもする。
- 茶芸ちゃげいその他茶を淹れて楽しむ技術と作法の総称で、工夫茶の淹れ方を土台に道具、所作、しつらえ、客への出し方までを含む。1970年代の台湾で日本の茶道と区別する言葉として広まり、中国でも茶芸師の国家資格や国家標準が整った。
- 茶漉し(茶濾・茶漏)ちゃこし(ちゃろ・ちゃろう)茶器蓋碗や茶壺から茶海に注ぐときに茶海の口に載せて、細かい葉や粉を受ける外付けの小さな網。粉の出やすい崩した緊圧茶や細かい紅茶で使い、大きく開く烏龍茶なら蓋で押さえるだけで足りる。茶漏は本来、茶壺に葉を入れる漏斗の名。
- 茶樹ちゃじゅその他茶の原料になるツバキ科の常緑樹で、六大茶類はすべてこの一種の木(カメリア・シネンシス)の葉から製法の違いで作られる。小葉の中国種と大葉のアッサム種の二つの変種があり、原産地は雲南を中心とする中国西南部とされる。
- 茶城・茶館ちゃじょう・ちゃかんその他中国茶を買う場所と飲む場所で、茶城は茶業者が何十軒も集まる大都市の茶葉卸売市場、茶館は茶を飲ませる店の総称。茶城では店に座って試飲しながら茶を選び、茶館は成都の庶民的な店から台湾生まれの茶藝館、茶カフェまで幅がある。
- 茶疏ちゃそ歴史・人物・文献明の許次紓が著した茶書で、団茶が廃れて散茶を釜で炒り湯に浸して飲む時代の茶を三十余りの項目で記す。産地、摘採、釜炒り、保存、水、飲む時と場まで扱い、いまの緑茶の作り方と飲み方にそのままつながる古典で、陸羽の茶経を補うと評された。
- 茶則ちゃそく茶器茶葉を茶缶から取り出して量り、蓋碗や茶壺に移すための細長いさじで、竹や木を樋状に削ったものが多い。則は量の基準の意味で、陸羽の茶経の茶則にさかのぼる。茶匙や茶針などとあわせて茶道六君子と呼ぶ台湾式の道具立てがある。
- 茶多酚ちゃたふぇんその他茶葉に含まれるポリフェノール類の総称で、乾燥葉の2〜3割を占め、主成分のカテキン類が渋みと収斂性のもとになる。酸化酵素の働きで別の成分に変わって紅茶の色と味を作り、この変化を止めるか進めるかで六大茶類が分かれる。
- 茶寵ちゃちょう茶器茶盤の上に置き、茶を淹れるたびに余った茶や洗茶の湯をかけて育てる小さな焼き物の置物。紫砂など釉薬をかけない土で作られ、茶を浴び続けると壺と同じように艶が出る。縁起物の姿が多く、湯をかけると水を吹く仕掛けのものもある。
- 茶刀・茶針ちゃとう・ちゃしん茶器餅茶や磚茶など固めた茶を崩すための道具で、平たい刃の茶刀と細い錐状の茶針があり、葉の層の隙間に差し込んでこじ開ける。切るのではなく層に沿って剥がすように使い、葉を砕かないのがこつ。茶道六君子の竹の茶針とは別の道具。
- 茶頭・二米ちゃとう・にべい等級・格付け鳳凰単叢の仕上げの選別で製品から外された茶で、茎や割れた葉の混ざる茶頭と、機械で弾かれた大きな葉が主体の二米がある。安いので潮州の食堂や家庭の日常茶として大量に飲まれ、茎が甘く長く蒸らしても渋みが出にくいため冷茶にも向く。
- 茶沼ちゃぬまその他茶にどっぷりハマって抜け出せなくなった状態や、そうなった人と界隈を指す日本語のネットスラング。趣味への没頭を沼にたとえる俗用から生まれ、中国茶や台湾茶の愛好家がSNSで自称・他称に使う。中国語の言葉ではなく、近いのは入坑。
- 茶馬古道ちゃばこどう歴史・人物・文献雲南や四川の茶を馬の隊商がチベットへ運んだ交易路の総称で、茶と馬を交換する茶馬交易に由来する。長い輸送中に茶が熟成したことが普洱茶の陳香の文化につながり、名前自体は1990年に付けられた新しいもの。
- 茶盤ちゃばん茶器茶壺や蓋碗を載せて茶を淹れるための盤で、洗茶の湯や壺にかけた湯を落とす排水口や受け皿が付く。竹や木、石、陶器などで作られ、潮州の茶船を台湾以降に大きく発展させた道具。湯をかけない乾泡では小さな壺承や茶巾で代えることが多い。
- 茶葉罐(茶缶・茶倉)ちゃようかん(ちゃかん・ちゃそう)茶器茶葉を保存するための容器で、茶葉を傷める光、湿気、空気、臭いの四つを遮るのが役目。錫や磁器、紫砂などで作られ、飲み切るまでの短期保存と普洱茶や白茶を年単位で寝かせる保存では求めるものが違い、後者は茶倉とも呼ぶ。
- 潮州朱泥手拉壺ちょうしゅうしゅでいしゅらこ茶器広東省潮州市の楓渓で作られる、轆轤で土を引き上げる手拉坯で成形した朱泥の小さな茶壺。潮州工夫茶の定番の器で、胎が薄く軽く掌に収まる小ささが特徴。薄いので湯を高温に保て、鳳凰単叢を淹れる器として見直されている。
- 張天福ちょうてんぷく歴史・人物・文献福建の茶学者(1910〜2017年)で、近代中国の茶業を代表し茶界の泰斗と呼ばれた人物。福建で最初の茶業の学校と試験場を作り、中国初の揉捻機を設計し、晩年まで官能審査の教育で多くの評茶員を育てた。倹・清・和・静の中国茶礼を提唱。
- 地理標志ちりひょうしその他特定の産地に由来する品質や評判を持つ産品の名前を保護する制度で、日本の地理的表示と同じ考え方。中国では龍井茶や普洱茶など多くの茶が国家標準を持ち、産地の範囲、品種、製法、等級を定める。表示の運用は緩いが、茶の公式な定義を知る資料になる。
- 陳化ちんか製法茶を長い時間置いて、保存中のゆっくりした酸化や重合、微生物の働きで味と香りを変化させること。普洱茶や黒茶、白茶では年を置くことが価値になり、製茶の酸化や渥堆とは別の変化。温度と湿度が速さを決め、湿気が多すぎるとカビや倉味が付く。
- 陳香ちんこう味・香りよい茶を適切に保存して年を経たときに生まれる、雑味やカビ臭のない好ましい熟成の香り。普洱茶や黒茶、老白茶の評価に使い、棗香や樟香などと呼び分ける。保存の失敗で付く倉味とは区別され、5年以上置いた鉄観音は陳香型と区分される。
- テアニンてあにんその他茶に特有のアミノ酸で、うまみと甘みのもとになり、日光を浴びるとカテキンに変わる成分。若い芽や春茶、日照の少ない高山や被覆した茶園の茶に多く、緑茶を低めの湯で淹れると甘く感じるのはこのため。カフェインの興奮を和らげる働きも研究されている。
- 鉄観音(品種)てっかんのん品種福建省安渓原産の茶樹品種で、茶名の鉄観音はこの品種の葉を鉄観音の製法で仕上げたものだけを指す。葉が厚く新芽が紫がかり、蘭の香りのもとになる成分を多く含むが、育てにくく収量が少ない。台湾では正欉鉄観音の名で他品種の茶と区別する。
- 湯感・厚みとうかん・あつみ味・香り茶を口に含んだときの液の質感を表す言葉で、厚みやとろみ、滑らかさといった口当たりと重さの感覚。味の種類ではなく、ワインのボディや日本語のコクに近い。香りと違って原料の力で決まるため、産地と樹齢の差が表れる。
- 投茶法(上投・中投・下投)とうちゃほう淹れ方ガラスのコップや茶碗で緑茶を淹れるとき、茶葉と湯をどの順で入れるかを上投・中投・下投に分けた区分。湯を先に注ぐ上投は産毛の多い繊細な芽の茶、茶葉を先に入れる下投は大きく硬い葉に向き、中投はその中間で最も汎用的。明代の『茶録』に由来。
- 特級とっきゅう等級・格付け中国茶の等級表示で最上位によく使われる呼び方で、国家標準は多くの茶で特級・一級・二級と等級を定める。等級は原料の若さと見た目の区分で、産地や味の良し悪しを保証しない。市場の特級表示には規定の裏付けがないことも多い。
な
- 肉桂にっけい品種武夷山原産の茶樹品種で、桂皮香と呼ぶシナモンを思わせる辛みのある香りが特徴で、水仙と並ぶ武夷岩茶の二大品種。焙煎の加減が出来を左右し、特定の岩場の名前で呼び分けて牛肉・馬肉のような略称で高値がつく。
- 乳酸発酵にゅうさんはっこう製法殺青した茶葉を竹筒や桶に詰めて空気を断ち、乳酸菌の働きで発酵させる工程で、漬物やなれずしと同じ種類の発酵。カビ主体で好気的な黒茶の渥堆とは仕組みが対照的で、酸味と保存性を生み、雲南の酸茶や日本の阿波晩茶がこの発酵で作られる。
- 年份ねんふん等級・格付け茶が作られた年のことで、ワインのヴィンテージに当たり、普洱茶や黒茶、白茶では何年ものかが値段と味の第一の目安。証明する手段は包装と売り手の言葉しかなく実際より古く表示された茶が多い。緑茶や清香型の烏龍茶では逆に新しいほどよい。
は
- 焙火ばいか製法乾燥まで済んだ烏龍茶を炭火や電気で時間をかけて加熱し、雑味を削って香りを澄ませ、保存性を高める仕上げの工程。強さを軽火・中火・足火と呼び分け、武夷岩茶では何段階にも分けて行う。温度を上げるほど本来の香りも減る引き算の作業でもある。
- 杯托(茶托・盞托)はいたく(ちゃたく・さんたく)茶器茶杯を載せる小さな受け皿で、熱い杯を持ちやすくし、客に出すときに杯へ直接触れずに済む茶道具。伝承では唐代の考案とされるが、出土品はそれより古く、宋代には茶盞と対の道具として定着した。蓋碗の受け皿も同じ系統。
- 白葉1号はくよう・いちごう品種安吉白茶の原料になる茶樹品種で、春の低温で新芽の葉緑素が減って白くなる温度に敏感な白化品種。葉緑素が少ないぶんアミノ酸が多くうまみが強く、浙江省安吉県で見つかった一本の古木から挿し木で増やされた。
- 発花・金花はっか・きんか製法茯磚茶の製造で、圧した茶を温湿度を保った部屋に置いて中に麹カビの一種を育てる工程が発花、その黄色い粒が金花。茯磚茶を他の黒茶と分ける決め手の工程で、金花が多く均一なほどよいとされ、甘い菌花香とまろやかな味を作る。
- 発酵はっこう製法中国茶で発酵と呼ばれるものは二つあり、白茶・烏龍茶・紅茶の発酵は葉の酵素によるポリフェノールの酸化で微生物は関与しない。黒茶の渥堆だけが微生物による発酵で後発酵と呼ぶ。六大茶類は工程の有無で分かれ、発酵度で並べる説明は正確でない。
- 発酵度はっこうど味・香り茶葉の酸化がどの程度進んだかを、緑茶を0、紅茶を100とする百分率などで表す言い方。測定値ではなく葉の色や水色から見当を付けた目安で、烏龍茶どうしを比べるには役立つが、六大茶類を一本の物差しに載せる説明には無理がある。
- 玻璃杯はりはい茶器茶葉を入れて湯を注ぎ、そのまま口をつけて飲むための背の高い耐熱ガラスのコップで、中国の茶館や家庭で最も日常的な器。葉が開いて沈む姿を眺められるので緑茶や黄茶、白毫銀針に向き、注ぎ出さず湯を足しながら飲む留根が定番。
- 万里茶道ばんりちゃどう歴史・人物・文献17世紀から20世紀初めにかけて、中国南部の茶を陸路でロシアへ運んだ交易路の総称。山西商人が茶を集め、モンゴルの草原を経て中露国境の恰克図でロシア商人に引き渡した。近年は中国の世界遺産暫定リストに入り、遺構が整備されている。
- 品茗杯(茶杯)ひんめいはい茶器中国茶を飲むための小さな杯で、量を飲むためではなく味と香りを確かめる器なので、ひと口から三口で飲み切れる大きさ。内側が白く口が薄いものが基本で、口の開き方や深さで香りの出方が変わり、圧手杯や鶏缸杯など形や由来にちなんだ名前が付く。
- 福鼎大毫茶ふくていだいごうちゃ品種福鼎の点頭鎮汪家洋村が原産の茶樹品種で、1980年代半ばに国家級良種に認定され華茶2号の番号を持つ。福鼎大白茶に似るが大葉種で芽がさらに太く産毛が多く収量も多いため、いまの福鼎の白茶園では割合が高く、市場の白毫銀針の多くを占める。
- 福鼎大白茶ふくていだいはくちゃ品種福鼎の点頭鎮が原産の茶樹品種で、1980年代半ばに最初に認定された国家級良種の第1号、華茶1号。芽が太く白い産毛が非常に多く、白毫銀針や白牡丹の原料品種で、ジャスミン茶の原料緑茶にも使われる。
- 佛手(品種)ぶっしゅ品種福建省永春県を原産とする烏龍茶用の茶樹品種で、大きく丸い葉が仏手柑の実に似ることから名付けられた。これで作る烏龍茶は柑橘の香櫞を思わせる香りと厚い味が特徴で、永春佛手の名で知られる。葉が大きく焙煎に耐えるので濃香型に向く。
- 拼配へいはい製法産地・季節・等級・品種の違う茶葉を組み合わせて一つの製品にする精製の工程で、日本語のブレンドに当たる。味を安定させ欠点を補い量を確保するための基本技術で、老舗の名品の多くは拼配であり、混ぜること自体は品質の低さを意味しない。
- 辺銷茶へんしょうちゃその他チベットやモンゴルなど中国辺境の少数民族地域へ売るために作られてきた茶の総称で、固く圧した黒茶が中心。肉や乳製品の多い食生活の必需品として、国が価格と供給を管理する政策商品になり、茶業不振の時代にも生産が途切れなかった。
- 鳳凰水仙ほうおうすいせん品種広東の鳳凰山に古くからある在来の茶樹品種群で、小喬木型の大葉種、鳳凰単叢の母体になった。実生の集団で株ごとに香りが違い、優れた株を選んで別々に仕上げたのが単叢で、挿し木で増やして香型ごとの品系になった。福建の水仙とは別系統。
- 包揉ほうじゅう製法殺青した烏龍茶の葉を布に包んで固く締め、包みごと転がして揉み、締めては解いて乾かすのを何十回も繰り返す工程。閩南や台湾の烏龍茶が半球状や球状になるのはこのためで、細胞が壊れすぎないので香りが残り煎持ちがよい。
ま
- 蜜香みつこう味・香り蜂蜜を思わせる甘い香りで、茶の香りを表す言葉の中でも最もよく使われるもののひとつ。台湾の東方美人では、ウンカに汁を吸われた芽葉の防御反応から生まれる香りを指し、品種や焙煎による蜜のような甘さにも使う。
- 明前めいぜん等級・格付け二十四節気の清明より前に摘んだ茶で、江南の緑茶ではいつ摘んだかが品質と価格を決める最も大きな要素。早い芽ほど小さく柔らかくアミノ酸が多いとされるが、早生品種の普及で時期の意味は変わり、明前は保証ではなく条件のひとつ。
- 名叢めいそう品種武夷山で、実生の茶樹から香りや味に特徴のある一株を選んで名前を付け、挿し木で増やした茶樹の系統。大紅袍など四大名叢が知られ、歴史的に数百の系統があるが、名前が同じでも株の由来が確かとは限らない。
- 毛茶もうちゃ製法摘んだ葉を萎凋・殺青・揉捻・乾燥などの初製まで終えた、精製前の茶で、日本茶の荒茶に当たる。茶類はこの段階で決まっているが茎や黄葉が混じり形も不ぞろいで、篩い分けや火入れをして製品にする。茶農が茶商や工場に売るときの単位でもある。
- 悶黄もんおう製法殺青した茶葉を、冷まさず湿り気を保ったまま積むか紙に包んで置き、葉を緑から黄色に変える黄茶だけの工程。微生物ではなく湿った熱による成分の変化で、葉・水色・茶殻が黄色くなる三黄の外観と丸みのある甘い味を作る。
- 聞香杯もんこうはい茶器香りを嗅ぐためだけに使う細長い杯で、1970年代以降の台湾の茶芸で考案された道具。茶を注いで飲杯に移し、空になった杯の内側に残る香りを冷めるまで追う。香りの立つ清香型の台湾烏龍茶で使われ、潮州の伝統的な工夫茶にはない。
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- 野生茶やせいちゃ等級・格付け人が植えたのではなく、雲南などの山に自生する大茶樹から摘んだ茶で、栽培種と種が違うものも含む。肥料なしでゆっくり育ち、味は軽やかで甘く独特の香りがある。放棄された茶園の茶を野放茶と呼んで区別することもあり、野生の名は濫用されやすい。
- 有機・農薬ゆうき・のうやくその他茶の栽培で農薬と肥料をどう使うかに関する言葉で、中国茶を買うときによく聞かれる話題。中国と台湾には有機認証があり、日本は残留農薬の基準を超えた茶を輸入できない。東方美人など農薬を使えない茶もあり、自然栽培や生態茶は認証ではなく作り手の言葉。
- 養壺ようこ茶器釉薬をかけない紫砂壺を使い込み、土の気孔に茶の成分をしみ込ませて壺を育てる、愛好家の作法。渋みが和らぎ艶が出る。一つの壺に一種類の茶だけを使い、洗剤を使わず湯で洗って乾かすのが基本で、使い始めの下ごしらえは開壺と呼ぶ。
- 葉底ようてい味・香り淹れたあとに残った茶葉のことで、日本語の茶殻に当たり、外形や水色と並ぶ官能審査の五因子のひとつ。色、柔らかさ、そろい、酸化の入り方から製法や摘採時期が読め、飲んだ印象の答え合わせになる。烏龍茶なら縁の赤い緑葉紅鑲辺が良い仕上がりの目印。
ら
- 陸羽りくう歴史・人物・文献唐代の人で、茶の起源から道具・製法・淹れ方・産地までを三巻十章にまとめた世界最初の茶の専門書『茶経』の著者。薬や食べ物に近かった茶を独立した文化として位置づけ、後世に茶聖と呼ばれて茶商が像を祀る茶神にもなった。
- 留根りゅうこん淹れ方ガラスのコップなどで注ぎ出さずに飲むとき、茶を飲み切らずに三分の一ほど残して湯を足す飲み方。残した茶が次の湯と混ざって濃さをつなぎ、次の杯が急に薄くなるのを防ぐ。杭州や成都の茶館で緑茶を一日中飲むときの日常的な作法。
- 冷泡れいほう淹れ方茶葉を常温か冷たい水に浸け、冷蔵庫で数時間かけて抽出する淹れ方で、日本語の水出しに当たる。低温では渋み成分が出にくく甘みと香りが前に出るため、清香型の烏龍茶や白茶、紅玉紅茶などに向き、台湾ではペットボトルにもなるほど日常的。
- 六大茶類ろくだいちゃるいその他中国茶を製法の違いで緑茶・白茶・黄茶・青茶・紅茶・黒茶の六つに分ける、最も基本的な分類。分ける軸は発酵度ではなくどの工程を経るかで、1979年に陳椽が体系化し、のちに国家標準と国際規格にもなった。
- 盧仝ろどう歴史・人物・文献唐代の詩人で、友人から贈られた新茶を詠んだ長詩の中の「七碗茶」の一節で知られ、茶仙と呼ばれる。一碗目から七碗目まで茶の効きを段階的に述べた表現は後世の茶の文章の型になり、茶館の掛け軸や日本の茶の湯でも親しまれた。
- 龍井群体種ろんじんぐんたいしゅ品種杭州西湖の龍井産地に古くからある、種から育った実生の茶樹の集団をまとめて呼ぶ在来種の総称。株ごとに性質がばらつき芽の出方も不ぞろいだが、味の厚みと余韻で評価され、主力品種の龍井43はここから選抜された。
- 龍井43ろんじんよんじゅうさん品種中国農業科学院茶叶研究所が在来の龍井群体種から一株を選んで育成した、龍井茶の主力の早生品種。在来種より7〜10日早くそろって芽が出るため明前茶の主力になり、平たく滑らかで形のそろった扁形の緑茶に向く。