中国茶辞典中国茶・台湾茶の用語とコラム

焙火(ばいか)

読み ばいか現地音 ベイフオ拼音 bèihuǒ別名 焙煎、炭焙、烘焙、火入れ、軽火、中火、足火、高火、退火、返青

仕上がった烏龍茶を炭火や電気で長時間加熱する工程。水分を抜いて保存性を高め、雑味を削って香りを落ち着かせる。強さによって軽火・中火・足火と呼び分け、武夷岩茶で特に重視される。

一通りの製茶が終わって乾燥まで済んだ茶(毛茶(もうちゃ))を、炭火や電気で時間をかけて加熱する仕上げの工程です。中国では烘焙(こうばい)炭焙(たんばい)とも呼びます。烏龍茶の製法の一部として広く行われ、特に武夷山(ぶいさん)岩茶(がんちゃ)では初焙(しょばい)復焙(ふくばい)炖火(とんか)と何段階にも分けて行う伝統があります。

何のために焙煎するのか

焙煎というと香ばしさを付ける工程と思われがちですが、それは目的の一つにすぎません。大きく三つの目的があります。

  1. 雑味を削り、香りを澄ませる。作りたての烏龍茶は青臭さやセロリのような香りのノイズが多く、低温で長時間焙煎することでそれを取り除き、花や果実の香りをかえって際立たせます。清香型(せいこうがた)の台湾茶や鳳凰単叢(ほうおうたんそう)のように焙煎していないように見える茶も、この低温焙煎は受けています。生産者によってはこれを焙煎と呼ばず「烘乾」(乾燥)と呼びます。
  2. 熟成香を作る。中温で長時間加熱すると、成分がゆっくり変化して乾燥果実のような甘い香りが生まれます。焦がすのではなく、焼き菓子を焼き上げるような発想です。濃香型(のうこうがた)の鳳凰単叢や凍頂烏龍炭焙、武夷岩茶(ぶいがんちゃ)の伝統的な足火(そくか)がこの方向です。成分が安定するため、開封後も劣化しにくくなります。
  3. 香ばしさを付ける。高温で焙煎して火の香りを付ける方法で、仕上げの最後に加えることが多いです。

焙煎は引き算でもある

焙煎の温度を上げるほど、茶が本来持っていた華やかな香り成分は揮発して失われます。木工のやすり掛けにたとえると、表面のざらつき(雑味や渋み)を取ると口当たりは滑らかになりますが、掛けすぎると木目(茶本来の香り)まで削れてしまう、という関係です。

だから濃香型は焙煎だけで作れるものではなく、做青(さくせい)の段階で酸化を高めに設定し、そこで出る渋みを焙煎で削ることを見越して原料から設計されます。古くなって香りの飛んだ清香型を焙煎しても、美味しい濃香型にはなりません。

火の強さの呼び分け

武夷岩茶では焙煎の強さを次のように呼びます。温度や時間は作り手によって幅があります。

呼び名目安特徴
軽火(けいか)低温で短め香りが高く鮮やか。品種の個性が出るが、保存中に青臭さが戻る「返青(へんせい)」が起きやすい
中火中温花や果実、蜜のような香り。岩韻が出やすく保存性もよい。現在の主流
足火やや高温果実香、厚い味。葉の表面に「蛤蟆皮(がまひ)」と呼ばれる泡状の突起が出る。伝統的な岩茶の仕上げ
高火(こうか)高温香り成分が飛び、炭化気味。良い茶とはされない

焙煎の直後は火の香りが強く出るため、数か月置いて落ち着かせてから飲む習慣があり、これを退火(たいか)と呼びます。

炭焙

炭火で焙煎することを炭焙と呼び、高度な技術を要する贅沢な方法とされます。日本の炭火のように炎や煙を当てるのではなく、炭を灰で完全に覆って輻射熱だけをじっくり伝えます。茶の粉が落ちても煙が出ないようにするためで、上手に炭焙された茶は焦げ臭がまったくありません。烏龍茶では1回あたり6〜10時間、これを数か月おきに数回繰り返すこともあります。

紅茶の焙煎

焙煎は烏龍茶だけのものではなく、武夷山の正山小種(せいざんしょうしゅ)のように乾燥後の紅茶を炭火で長時間焙煎して果実香を高める作り方があります。安渓の鉄観音では、国家標準(GB/T 30357.2)が清香型に焙火を加えたものを濃香型として区分しています。

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