製法
- 渥堆あくたい — 殺青・揉捻した茶葉に水を打って積み上げ、温度と湿度を保ちながら微生物の働きで発酵させる黒茶の工程。六大茶類で唯一、酵素の酸化ではなく微生物を使い、渋みが減って味が丸くなる。普洱熟茶はこの技術で1970年代に生まれた。
- 萎凋いちょう — 摘んだ葉を薄く広げて置き、水分を減らして柔らかく萎れさせる、白茶・烏龍茶・紅茶の最初の工程。脱水で細胞膜が緩んで酵素が香りの前駆体と出会い、花や果実のような香りの土台がここで作られる。緑茶では通常行わず、摘んですぐ殺青する。
- 窨制いんせい — 茶葉と生花を層にして密閉し、花の香りを茶葉に吸わせる花茶の製法で、茉莉花茶が代表。一晩置いて翌朝花を取り除き乾かす作業を一窨と数え、高級品は数回から十回近く繰り返す。回数だけでなく茶葉と花の質が品質を決め、本来は花を残さない。
- 晒青さいせい — 殺青と揉捻を終えた茶葉を日光で乾かすことで、緑茶を乾燥方法で分けた区分のひとつ。低温で乾くため酵素が一部生き残り熟成の土台になり、雲南の晒青毛茶が普洱茶の原料の条件とされる。烏龍茶や白茶では日光萎凋をこう呼ぶこともある。
- 做青さくせい — 萎凋した葉を揺すって縁に傷をつけ、静置して酸化を待つことを繰り返す、烏龍茶だけにある工程。揺すりの強さと回数、静置の時間で酸化の度合いが決まり、烏龍茶の味と香りを左右する最も重要な工程とされる。縁が赤く中央が緑の緑葉紅鑲辺はこの工程の跡。
- 殺青さっせい — 摘んだ茶葉を高温で加熱して酵素を失活させ、それ以上酸化が進まないようにする工程で、緑茶を緑茶たらしめる。加熱方法で炒青・蒸青・烘青・晒青に呼び分け、烏龍茶では做青で進めた酸化を途中で止める要の工程。白茶と紅茶にはない。
- 揉捻じゅうねん — 葉を押しつけながら転がして細胞に細かな傷をつけ、成分が溶け出しやすくすると同時に茶葉の形を作る工程。白茶を除くすべての茶類にあり、強く揉めば早く出て煎が続かず、弱く揉めば煎を重ねられる。烏龍茶を球状にする包揉もその一種。
- 炒青・烘青・蒸青しょうせい・こうせい・じょうせい — 緑茶を殺青と乾燥の方法で分ける呼び方で、国家標準は炒青、烘青、晒青、蒸青の四つに区分する。釜で炒る炒青は炒り香、火で焙る烘青は葉の香りと姿、蒸気の蒸青は青い香りとうまみが残り、龍井は炒青、日本の煎茶は蒸青。
- 精製せいせい — 茶園で乾燥まで終えた毛茶を篩い分け・風選・茎取り・拼配・火入れで整えて製品にする工程。摘採から乾燥までの初製と対をなし、日本茶の荒茶と仕上げの関係に当たる。等級や形のそろいだけでなく、茎の扱いや火入れで味も変わる。
- 走水そうすい — 烏龍茶の萎凋と做青で、葉の水分が茎から葉へ、内側から表面へ移動して抜けていくこと。水分の移動が均一に進むと酸化と香りの変化が同時に進んで青臭さが抜けるため、烏龍茶の製茶の要とされる。茎に水が残る走水不良では青臭さや渋みが残る。
- 陳化ちんか — 茶を長い時間置いて、保存中のゆっくりした酸化や重合、微生物の働きで味と香りを変化させること。普洱茶や黒茶、白茶では年を置くことが価値になり、製茶の酸化や渥堆とは別の変化。温度と湿度が速さを決め、湿気が多すぎるとカビや倉味が付く。
- 乳酸発酵にゅうさんはっこう — 殺青した茶葉を竹筒や桶に詰めて空気を断ち、乳酸菌の働きで発酵させる工程で、漬物やなれずしと同じ種類の発酵。カビ主体で好気的な黒茶の渥堆とは仕組みが対照的で、酸味と保存性を生み、雲南の酸茶や日本の阿波晩茶がこの発酵で作られる。
- 焙火ばいか — 乾燥まで済んだ烏龍茶を炭火や電気で時間をかけて加熱し、雑味を削って香りを澄ませ、保存性を高める仕上げの工程。強さを軽火・中火・足火と呼び分け、武夷岩茶では何段階にも分けて行う。温度を上げるほど本来の香りも減る引き算の作業でもある。
- 発花・金花はっか・きんか — 茯磚茶の製造で、圧した茶を温湿度を保った部屋に置いて中に麹カビの一種を育てる工程が発花、その黄色い粒が金花。茯磚茶を他の黒茶と分ける決め手の工程で、金花が多く均一なほどよいとされ、甘い菌花香とまろやかな味を作る。
- 発酵はっこう — 中国茶で発酵と呼ばれるものは二つあり、白茶・烏龍茶・紅茶の発酵は葉の酵素によるポリフェノールの酸化で微生物は関与しない。黒茶の渥堆だけが微生物による発酵で後発酵と呼ぶ。六大茶類は工程の有無で分かれ、発酵度で並べる説明は正確でない。
- 拼配へいはい — 産地・季節・等級・品種の違う茶葉を組み合わせて一つの製品にする精製の工程で、日本語のブレンドに当たる。味を安定させ欠点を補い量を確保するための基本技術で、老舗の名品の多くは拼配であり、混ぜること自体は品質の低さを意味しない。
- 包揉ほうじゅう — 殺青した烏龍茶の葉を布に包んで固く締め、包みごと転がして揉み、締めては解いて乾かすのを何十回も繰り返す工程。閩南や台湾の烏龍茶が半球状や球状になるのはこのためで、細胞が壊れすぎないので香りが残り煎持ちがよい。
- 毛茶もうちゃ — 摘んだ葉を萎凋・殺青・揉捻・乾燥などの初製まで終えた、精製前の茶で、日本茶の荒茶に当たる。茶類はこの段階で決まっているが茎や黄葉が混じり形も不ぞろいで、篩い分けや火入れをして製品にする。茶農が茶商や工場に売るときの単位でもある。
- 悶黄もんおう — 殺青した茶葉を、冷まさず湿り気を保ったまま積むか紙に包んで置き、葉を緑から黄色に変える黄茶だけの工程。微生物ではなく湿った熱による成分の変化で、葉・水色・茶殻が黄色くなる三黄の外観と丸みのある甘い味を作る。