中国茶辞典中国茶・台湾茶の用語とコラム

渥堆(あくたい)

読み あくたい現地音 ウォドゥイ拼音 wòduī別名 後発酵、微生物発酵、堆積発酵、pile fermentation、post-fermentation

黒茶の工程。殺青・揉捻した茶葉を湿らせて積み上げ、微生物の働きで発酵させる。六大茶類の中で唯一、酵素ではなく微生物を使う工程で、普洱熟茶はこの技術で1970年代に生まれた。

殺青(さっせい)揉捻(じゅうねん)を終えた茶葉に水を打ち、山のように積み上げて布をかけ、温度と湿度を保ちながら微生物の働きで発酵させる工程です。国家標準の茶葉分類(GB/T 30766)は黒茶(こくちゃ)を「殺青・揉捻・渥堆・乾燥」で作る茶と定義しており、渥堆は黒茶を黒茶たらしめる工程です。

六大茶類で唯一の微生物発酵

中国茶で「発酵」というとき、白茶・烏龍茶・紅茶の発酵は葉に含まれる酵素による酸化のことで、微生物は関わっていません。渥堆だけが例外で、積み上げた葉の中で麹カビなどの微生物が増殖し、その微生物が出す酵素が茶の成分を分解します。味噌やチーズの発酵と同じ仕組みです。黄茶の悶黄(もんおう)も葉を積んで置く工程ですが、こちらは湿熱による成分変化で微生物は関与しないため、渥堆とは別物です。

2023年に定められた茶の分類の国際規格(ISO 20715)でも、渥堆は「微生物の活動を許容し、ポリフェノールの重合を促進する」工程と説明されています。

何が起きるか

数十日かけて微生物発酵が進むと、渋みのもとになるポリフェノールが分解・重合して減り、葉は黒褐色に、水色は濃い赤褐色になり、味はまろやかで丸くなります。温度が上がりすぎると焦げたようになり、低すぎると発酵が進まないため、堆の切り返しと水分の管理が味を決めます。

普洱熟茶の誕生

普洱茶(ぷーあるちゃ)には、殺青後に天日乾燥して自然に熟成させる「生茶(しょうちゃ)」と、渥堆を経た「熟茶(じゅくちゃ)」があります。熟茶の歴史は浅く、1973年に雲南省の茶葉公司が広東で行われていた渥堆の技術を学び、1975年に昆明茶廠(こんめいちゃしょう)で製法を確立したとされています。それまで数十年の熟成を要した生茶の丸みを、数十日で人工的に作り出す技術でした。日本に流通している普洱茶の多くはこの熟茶です。

なお、渥堆を経ていない生茶を黒茶に分類してよいかは議論があり、国際規格でも生茶の位置づけは明確にされていません。詳しくは黒茶(こくちゃ)を参照してください。

他の黒茶

渥堆は普洱熟茶だけの工程ではなく、湖南(こなん)安化黒茶(あんかこくちゃ)広西(こうせい)六堡茶(ろっぽちゃ)四川(しせん)蔵茶(ぞうちゃ)湖北(こほく)青磚茶(せいせんちゃ)など各地の黒茶に共通しています。それぞれ原料の葉の成熟度や渥堆の条件が違い、六堡茶の檳榔香、茯磚茶(ふくせんちゃ)の中に生える「金花(きんか)」(冠突散嚢菌(かんとつさんのうきん))のように、産地ごとの特徴が微生物の違いとして現れます。

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