中国茶辞典中国茶・台湾茶の用語とコラム

発酵(はっこう)

読み はっこう現地音 ファージャオ拼音 fājiào中国語 发酵 / 發酵別名 酸化、酵素発酵、微生物発酵、発酵度、不発酵茶、半発酵茶、全発酵茶、後発酵茶、oxidation、fermentation

中国茶で「発酵」と呼ばれるものには二種類ある。白茶・烏龍茶・紅茶の発酵は葉の酵素によるポリフェノールの酸化で微生物は関与せず、黒茶の渥堆だけが微生物による発酵。紅茶では揉捻後に葉を置いて酸化を完了させる工程の名前でもある。

茶の説明に必ず出てくる言葉ですが、中国茶で「発酵」と言うときの中身は二つあり、読むときに切り替えが必要です。

酵素による酸化(白茶・烏龍茶・紅茶)

摘んだ茶の葉には、ポリフェノールを酸化させる酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)が含まれています。葉を萎れさせ、揺すったり揉んだりして細胞を壊すと、この酵素が働いてポリフェノールが酸化し、苦みが渋みに変わり、緑の色素が退いて黄や赤の色素ができ、生葉の香りが消えて別の香りが生まれます。林檎の切り口が茶色くなるのと同じ現象で、微生物は関与しません。中国茶ではこれを慣習的に「発酵」と呼び、白茶(はくちゃ)を微発酵、青茶(烏龍茶)(せいちゃ)を半発酵(部分発酵)、紅茶(こうちゃ)を全発酵と言います。

紅茶では、揉捻(じゅうねん)のあとに葉を湿った状態で置いて酸化を完了させる工程そのものを「発酵」と呼び、国家標準の紅茶の定義(萎凋・揉捻・発酵・乾燥)にもその名で入っています。

微生物による発酵(黒茶)

黒茶(こくちゃ)渥堆(あくたい)は、湿らせた茶葉を積み上げて麹カビなどの微生物を増やし、その微生物の酵素で成分を分解させる工程です。味噌やチーズの発酵と同じ意味での発酵で、これを酵素による酸化と区別して「後発酵」と呼びます。同じ「発酵」の字でも仕組みはまったく別で、黄茶の悶黄(もんおう)は湿熱による変化で微生物は関与しないため、後発酵とは違います。

「発酵度」で分けることへの注意

六大茶類を「発酵度の違い」で並べる説明は日本でよく見られますが、分類はあくまで工程の有無で決まり、酸化の程度はその結果にすぎません。発酵度で並べると白茶と黄茶のどちらが上か、といった意味のない疑問が生まれます。また、烏龍茶や紅茶の香りは酸化酵素だけで作られるのではなく、萎凋の段階で別の酵素が香りの前駆体を切り離すことで生まれるため、「発酵度」という一つの物差しでは茶の性格を説明しきれない、という指摘があります。

英語での扱い

英語では酵素による酸化を oxidation、微生物によるものを fermentation と分け、2023年の国際規格(ISO 20715)では aeration、oxidation、fermentation を併記して地域による言葉の揺れを認めています。中国語の「发酵」を訳すときは、どちらの意味かを意識する必要があります。

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