黒茶
読み こくちゃ拼音 hēichá中国語 黑茶別名 後発酵茶、dark tea、普洱茶、普洱熟茶、安化黒茶、六堡茶、茯磚茶、蔵茶、青磚茶、辺銷茶
殺青後に微生物による発酵を進めた茶。国家標準は殺青・揉捻・渥堆・乾燥で作る茶と定義し、普洱熟茶・六堡茶・安化黒茶・茯磚茶などが含まれる。六大茶類で唯一、微生物の働きを使う。普洱生茶の分類には議論がある。
| 発酵(酸化)度 | 後発酵(渥堆による微生物発酵) |
|---|---|
| 特徴的な工程 | 殺青 → 揉捻 → 渥堆 |
殺青・揉捻のあと、湿らせた茶葉を積み上げて微生物発酵を進める渥堆を経た茶です。国家標準の茶葉分類(GB/T 30766)は黒茶を「殺青・揉捻・渥堆・乾燥などの工程で作られた製品」と定義し、産地によって湖南黒茶、四川黒茶、湖北黒茶、広西黒茶、雲南黒茶などに区分しています。六大茶類の中で唯一、酵素ではなく微生物の働きを使う茶類で、「後発酵茶」と呼ばれます。
主な黒茶
| 名前 | 産地 | 特徴 |
|---|---|---|
| 普洱熟茶 | 雲南省 | 大葉種の晒青毛茶を渥堆。餅茶・沱茶・磚茶に緊圧されることが多い |
| 安化黒茶 | 湖南省安化 | 千両茶・茯磚茶・黒磚茶など。茯磚茶の中に「金花」(冠突散嚢菌)が育つ |
| 六堡茶 | 広西壮族自治区梧州 | 檳榔の香りと形容される独特の香り |
| 蔵茶・康磚茶 | 四川省雅安 | チベット向けに作られてきた磚茶 |
| 青磚茶 | 湖北省 | モンゴル・ロシア向けの磚茶 |
黒茶の多くは緊圧茶の形で、長期保存と運搬に向きます。歴史的にチベット、モンゴル、東南アジアへ茶馬古道などを通じて運ばれ、辺境向けの「辺銷茶」として発達しました。近年は中国国内で健康志向と熟成の面白さから需要が伸び、生産量が大きく増えています。
普洱茶の生茶と熟茶
普洱茶は国家標準(GB/T 22111)で雲南大葉種の晒青毛茶を原料とし、生茶と熟茶に分けられます。渥堆を経た熟茶は1973年から1975年にかけて昆明茶廠で製法が確立された新しい茶で、数十年かかる熟成の丸みを数十日で作り出します。一方の生茶は渥堆を経ず、天日乾燥した晒青毛茶をそのまま、または緊圧して自然に熟成させます。若い生茶は緑茶や白茶に近く、年を経るごとに褐色に変わって味が丸くなります。
生茶の分類をめぐる議論
生茶は渥堆を経ていないため、黒茶の定義には当てはまりません。原料の晒青毛茶は緑茶に分類されますが、熟成を前提とする点で鮮度を重視する緑茶とも性格が違います。2023年の国際規格(ISO 20715)でも普洱生茶の位置づけは明確にされておらず、中国国内でも「普洱茶を第七の茶類にすべきか」という議論が繰り返されています。このサイトでは慣用に従い普洱生茶も黒茶の項で扱いますが、製法上は別物である点に注意してください。
淹れ方の傾向
黒茶は煎持ちがよく、沸騰した湯で高温短時間の抽出を10煎ほど重ねる人が多いです。緊圧茶は最初に一度湯を通して葉をほぐし、1煎目はやや長め、2煎目以降は短く、というのが定番です。蔵茶や茯磚茶は煮出して飲む地域もあります。
この分類の茶葉
- 小青柑広東省新会の小さな青いみかんの中身をくり抜き、雲南の普洱熟茶を詰めて乾燥させた茶。新会の陳皮と普洱を合わせる柑普茶の一種で、2015年前後に中国で爆発的に流行した。一個ずつ淹れる手軽さと柑橘の香りで、普洱茶の入門としても人気。
- 青磚茶湖北省赤壁市の羊楼洞と趙李橋で作られる黒茶。成熟した葉を殺青・揉捻・日干しして老青茶を作り、渥堆で発酵させて蒸してレンガ状に圧す。清代に山西商人が万里茶道でモンゴル・ロシアへ運んだ辺銷茶で、表面の「川」の字が信用の印だった。製法は国家級無形文化遺産、2022年ユネスコ登録の構成要素。
- 千両茶湖南省安化の黒茶を竹の籠に詰め、数人がかりで踏み固めて円柱状にした巨大な茶。重さが清代の秤で千両(約36キロ)あることから名付けられ、花巻茶とも言う。清の道光年間に生まれ、製法は2008年に国家級無形文化遺産、2022年にユネスコ無形文化遺産の構成要素になった。小型の百両茶、十両茶もある。
- 蔵茶四川省雅安で作られ、チベットへ運ばれてきた黒茶。唐代以来の茶馬交易の主役で、南路辺茶とも呼ばれる。成熟した葉と茎を殺青・揉捻したあと渥堆で発酵させ、康磚や金尖の名でレンガ状に固める。チベットではバター茶の原料として日常の必需品で、製法は国家級無形文化遺産。
- 普洱熟茶普洱生茶の晒青毛茶を湿らせて積み上げ、微生物で発酵させた渥堆を経た茶。1973年から1975年にかけて昆明茶廠で製法が確立された新しい茶で、数十年かかる熟成の丸みを数十日で作る。日本で流通する普洱茶の多くはこの熟茶。
- 普洱生茶雲南大葉種の葉を殺青・揉捻し天日で乾かした晒青毛茶を、そのまま、または蒸して餅茶などに固め、自然に熟成させる茶。渥堆を経ないため製法上は黒茶の定義に当てはまらず、若いうちは緑茶に近く、年を経るごとに変化する「越陳越香」が愛好家に珍重される。
- 茯磚茶湖南省安化の黒茶をレンガ状に固め、「発花」という工程で冠突散嚢菌(金花)を茶の中に育てた黒茶。もとは陝西の涇陽で安化の茶を加工したもので、モンゴルや西北へ運ばれた辺銷茶。製法は2008年に国家級無形文化遺産、2022年にユネスコ無形文化遺産の構成要素になった。
- 六堡茶広西壮族自治区梧州市の黒茶。殺青・揉捻・堆悶した毛茶を渥堆して仕上げ、竹籠に詰めて熟成させる。檳榔の香りと形容される独特の香りで知られ、清代から東南アジアの華人社会に輸出されてきた。製法は2014年に国家級無形文化遺産に登録。
よく出る用語
参考リンク
- GB/T 30766-2014 茶叶分类(国家標準) — 黒茶の定義と産地別の区分
- GB/T 22111-2008 地理标志产品 普洱茶(国家標準) — 普洱茶の生茶・熟茶の定義と産地範囲
- 湖南农业大学茶学教育部重点实验室: 中国黑茶标准化工作十年 — 黒茶の国家標準(GB/T 32719)の整備
- HOJO: プーアル茶とは?プーアル茶の完全ガイド — 生茶と熟茶、産地、歴史、品質の見方
- HOJO: 意外に知らないお茶の発酵の基礎 — 微生物発酵と酵素発酵の違い
- HOJO: モンゴルで愛される黒茶、茯磚茶を発売 — 茯磚茶と金花
- 消観茶論 第166回: ISOの国際規格『茶類の分類』の内容を考察 — 国際規格での黒茶と渥堆の定義、生茶の位置づけ
- 消観茶論 第107回: 変わる中国茶-黒茶と紅茶が躍進 — 黒茶の生産量の伸び
- 『はじめての中国茶とおやつ』甘露 著(誠文堂新光社) p.78-79 — 普洱茶 生茶・熟茶の項