青茶(烏龍茶)
読み せいちゃ現地音 チンチャ拼音 qīngchá中国語 青茶別名 烏龍茶、乌龙茶、ウーロン茶、半発酵茶、部分発酵茶、oolong tea、閩北烏龍、閩南烏龍、広東烏龍、台湾烏龍
葉を部分的に酸化させた茶。国家標準は萎凋・做青・殺青・揉捻・乾燥で作る茶と定義し、産地によって閩北(武夷岩茶)・閩南(鉄観音)・広東(鳳凰単叢)・台湾の四つの型に分けられる。分類名は青茶、通称は烏龍茶。
| 発酵(酸化)度 | 半発酵(做青による部分酸化) |
|---|---|
| 特徴的な工程 | 萎凋 → 做青 → 殺青 → 揉捻 → 焙火 |
葉を揺すって縁に傷をつけ、休ませることを繰り返す做青で酸化を途中まで進め、殺青で止めた茶です。国家標準の茶葉分類(GB/T 30766)は烏龍茶を「萎凋・做青・殺青・揉捻・乾燥などの工程で作られた製品」と定義しています。六大茶類の分類名としては「青茶」、日常の呼び名としては「烏龍茶」が使われますが、指しているものは同じです。
酸化の幅が広い
烏龍茶は緑茶と紅茶の中間にあると説明されますが、実際の酸化の度合いは非常に幅広く、緑色で花の香りの立つ軽いもの(清香型の鉄観音、台湾の高山茶、文山包種)から、褐色で果実や蜜の香りの重いもの(東方美人)まであります。さらに仕上げの焙火の強さでも味が大きく変わります。緑色をした高山烏龍茶を緑茶と間違える人がいますが、萎凋と做青を経ているので分類上は烏龍茶です。
産地による四つの型
烏龍茶は産地ごとの型がはっきりしており、国家標準も産地で区分しています。
| 型 | 産地 | 形 | 代表 |
|---|---|---|---|
| 閩北烏龍 | 福建省北部武夷山 | 条索状(よじれた棒状) | 武夷岩茶(大紅袍、肉桂、水仙) |
| 閩南烏龍 | 福建省南部安渓 | 半球状 | 鉄観音、黄金桂 |
| 広東烏龍 | 広東省潮州鳳凰山 | 条索状 | 鳳凰単叢、嶺頭単叢 |
| 台湾烏龍 | 台湾 | 半球状が多い | 凍頂烏龍、高山茶、文山包種、東方美人 |
なお中国の国家標準は「台式(台湾)烏龍茶」を、台湾の伝統的な製法で作られた顆粒状の製品と定義しており、産地が台湾であることを条件にしていません。中国で「台湾烏龍茶」として売られる茶が台湾産とは限らないのはこのためです。
製法
日光萎凋と室内萎凋で葉を萎れさせ、做青で酸化を進め、殺青で止めます。そのあと温かいうちに揉捻し、閩南と台湾では布に包んで締め上げる包揉で球状に、閩北と広東では条索状に整えます。最後に焙煎をかけ、その強さで清香型と濃香型に分かれます。伝統的な烏龍茶は淹れたあとの葉の縁が赤く中央が緑の「緑葉紅鑲辺」になります。
これらの製法は文化遺産としても登録されており、武夷岩茶の製法は2006年、鉄観音の製法は2008年に国家級無形文化遺産に、安渓の茶文化システムは2022年に世界農業遺産に認定されています。
歴史
烏龍茶は明末から清初にかけて福建で生まれたとされ、潮州で先に生まれて武夷山に伝わったという説もあります。武夷岩茶と正山小種(紅茶)は同じ武夷山で同時期に発達しており、萎凋と部分酸化という技術を共有しています。台湾へは19世紀に福建から茶樹と製法が伝わりました。
淹れ方の傾向
烏龍茶は香りが命とされ、沸騰した湯で淹れる人がほとんどです。茶葉を多めに入れて短時間で注ぎ出す工夫茶の淹れ方が基本で、球状の茶は1煎目をやや長めにして葉を開かせます。
この分類の茶葉
- 阿里山高山茶台湾嘉義県阿里山一帯の標高1000メートル以上の茶園で作られる、酸化の軽い球状の烏龍茶。台湾の公式定義では海抜1000メートル以上の茶を高山茶と呼び、阿里山は梨山・杉林渓と並ぶ三大高山茶区で生産量が最も多い。青心烏龍が主で金萱も栽培される。
- 黄金桂福建省安渓の烏龍茶で、黄旦(黄棪)という品種で作る。金木犀のような高く鋭い香りと金黄色の水色から黄金桂と名付けられ、香りが天を突くという意味の「透天香」の異名を持つ。芽が早く出るため安渓で最も早い新茶で、鉄観音より軽やか。烏龍茶の国家標準(GB/T 30357.3)に規格がある。
- 鴨屎香鳳凰単叢の香型のひとつで、2010年代に中国で爆発的に人気になった系統。名前は「鴨の糞の香り」だが、実際は金銀花や梔子のような鋭い花の香りで、名前の由来は農家が木を盗まれないよう悪い名前を付けたという伝承。正式には銀花香と呼ばれ、香型の分類では黄枝香に近い。
- 金萱茶台湾の茶業改良場が育成した品種「台茶12号」(金萱)で作る烏龍茶。ミルクやバターのような甘い香りが特徴で、清香型に仕上げた低〜中標高の茶で最も香りが出る。阿里山や南投で広く栽培され、飲みやすさから台湾茶の入門として人気。香料でミルクの香りを付けた「ミルク烏龍」とは別物。
- 紅烏龍台湾東部、台東県鹿野で2008年に茶業改良場台東分場が開発した烏龍茶。烏龍茶の製法で酸化を紅茶に近いところまで進め、焙煎をかけて仕上げる。烏龍茶の中で最も酸化度が高く、水色は紅茶のように橙紅色。夏秋の茶葉を活かすために生まれ、冷茶にも向く新しい台湾茶。
- 杉林渓台湾南投県竹山鎮の杉林渓一帯、標高1500〜1900メートルで作られる高山烏龍茶。杉の森と渓谷に囲まれた茶園で、清涼感のある香りと澄んだ甘さが特徴。龍鳳峡、羊仔湾など茶区ごとの名前でも売られ、梨山、阿里山と並ぶ台湾高山茶の代表的な産地。
- 四季春台湾で、1980年代に台北の木柵の農家が見つけた品種「四季春」で作る烏龍茶。年に何度も摘めて香りが濃いことから名付けられ、南投県名間郷の松柏嶺で大量に栽培される。梔子のような花の香りと軽い甘みで、手ごろな値段の日常の茶であり、タピオカミルクティーなど台湾の飲料茶の主要な原料でもある。
- 漳平水仙福建省龍岩市漳平で作られる、烏龍茶で唯一の緊圧茶。水仙品種の葉を烏龍茶の製法で仕上げたあと木型で四角く押し固め、紙に包んで焙煎する。清末に双洋で生まれ、紙に包んで運びやすくした独特の姿で知られる。花の香りとまろやかな味で、製法は無形文化遺産に登録されている。
- 芝蘭香鳳凰単叢の香型のひとつで、蘭の花のような細く鋭い香りを持つ系統。十大香型の中でも香りの高さと鮮やかさで知られ、甘い香りと果実の香りが重なる。烏崠山の八仙(八仙過海)は芝蘭香の系統の代表的な名前で、鴨屎香や黄枝香と並んで香りで飲ませる単叢。
- 翠玉茶台湾の茶業改良場が育成した品種「台茶13号」(翠玉)で作る烏龍茶。金萱(台茶12号)と同じ1981年に発表された姉妹品種で、野の花や玉蘭にたとえられる華やかな香りが特徴。金萱ほど広まらなかったが、南投などで包種茶や球形烏龍茶に仕立てられ、金萱・四季春と並ぶ台湾の主要品種のひとつ。
- 水金亀武夷岩茶の四大名叢のひとつ。葉が厚く艶があって亀の甲のように見え、清末に大雨で茶樹が牛欄坑に流れ着いたという由来話がある。梅の花のような香りと滑らかな甘さが特徴で、四大名叢の中で最も飲みやすいとされる。
- 宋種鳳凰山で最も古いとされる茶樹の系統で、宋代から続く木という伝承から宋種と呼ばれる。烏崠山の宋種の母樹は樹齢数百年とされ、そこから挿し木で増やした木の茶が宋種として売られる。黄枝香や東方紅などの系統があり、老欉の宋種は単叢の最高峰として取引される。
- 大禹嶺台湾中部、花蓮県・台中市・南投県の境にある大禹嶺の茶園で作られた高山烏龍茶。標高2300〜2600メートルで台湾最高の茶産地とされ、梨山茶区に属する。生産量はごくわずかで、2015年に主要な茶園が伐採されたあとも大禹嶺の名で売られる茶は多く、産地名の扱いに最も注意が要る茶。
- 大紅袍武夷岩茶を代表する銘柄。九龍窠の岩壁に残る母樹の伝説で知られ、現在流通するものは母樹由来の品種を単一で仕上げた「純種」か、複数品種をブレンドした「商品大紅袍」で、市場の大半は後者。
- 陳年烏龍焙煎した烏龍茶を数年から数十年寝かせた茶の総称。福建や台湾では昔から胃を整える民間の薬のように飲まれ、安渓では2016年に国家標準が「五年以上貯蔵した陳香型鉄観音」を定義した。梅や乾燥果実のような熟成の香りと、酸味を伴うまろやかな甘さが持ち味。年份の表示は目安にすぎず、保存中に焙煎をかけ直すことが多い。
- 鉄観音福建省安渓の烏龍茶で、茶樹の品種名でもある。蘭の花のような香りで知られ、酸化の軽い清香型、焙煎した濃香型、長期保存した陳香型に分かれる。安渓の茶文化は2022年に世界農業遺産に認定された。
- 鉄羅漢武夷岩茶の四大名叢のひとつで、最も古い名叢とされる。慧苑坑の鬼洞が原産地と伝えられ、宋代から名があるという説明もある。薬草のような香りと力強い味が特徴で、四大名叢の中で最も重厚な茶とされる。
- 凍頂烏龍台湾南投県鹿谷郷の烏龍茶で、台湾茶の代名詞。青心烏龍種を半球状に巻き、中程度の酸化と焙煎で仕上げる。台湾の公式分類では「焙香型球形烏龍茶」。名前が広く使われるため、産地・品種・焙煎の異なる茶が同じ名で流通している。
- 東方美人台湾新竹・苗栗の丘陵で作られる、酸化の最も重い烏龍茶。小緑葉蝉(ウンカ)に汁を吸われた芽葉だけを夏に摘み、蜜と熟した果実のような香りに仕上げる。白毫烏龍、膨風茶とも呼ばれ、イギリスの女王が名付けたという伝承がある。
- 白鶏冠武夷岩茶の四大名叢のひとつ。新芽が黄白色で葉の縁が波打ち、鶏のとさかに見えることから名付けられた。慧苑の火焔峰の下が原産と伝えられ、明代の記録があるとされる。焙煎を軽めにして淡く軽やかな香味に仕上げることが多く、重厚な鉄羅漢と対照的な茶。
- 武夷水仙武夷岩茶のうち水仙品種で作ったもの。肉桂と並ぶ武夷岩茶の二大品種で、味の厚みと丸さが持ち味。樹齢の高い木から作る老欉水仙は木や苔のような香りが珍重され、大紅袍のブレンドの主要な原料でもある。
- 武夷肉桂武夷岩茶のうち肉桂品種で作ったもの。シナモンのような辛みのある香り「桂皮香」が特徴で、水仙と並ぶ武夷岩茶の二大品種。牛欄坑産は「牛肉」、馬頭岩産は「馬肉」と略称され、正岩の岩場ごとに最も高値で取引される岩茶。
- 佛手福建省永春を主産地とする烏龍茶で、葉が仏手柑の実のように大きい品種「佛手」で作る。柑橘の皮を思わせる香櫞香とまろやかな味が特徴で、永春佛手の名で地理標志産品になっている。焙煎に耐え、年を置いた老茶は胃によいとして飲まれる。台湾でも少量作られる。
- 文山包種台北の南、新北市坪林を中心とする文山茶区の烏龍茶で、台湾の烏龍茶の中で最も酸化が軽い。球状に丸めず条索状に仕上げ、花のような清らかな香りを重んじる。「包種」は茶を紙で包んで売った包装に由来し、台湾で最初に烏龍品種が植えられた地域の茶とされる。
- 鳳凰単叢広東省潮州の鳳凰山で作られる烏龍茶。在来種の鳳凰水仙から香りの優れた株を選び、株ごと・香りの型ごとに仕上げるため「単叢」と呼ぶ。蜜蘭香、鴨屎香、宋種など数十の銘柄があり、花や果実のような香りと際立って長い余韻が特徴。潮州工夫茶の核心の茶で、地理標志産品。
- 蜜蘭香鳳凰単叢の香型のひとつで、最も広く飲まれている系統。蜜のような甘さと蘭の花の香りを合わせ持つことから名付けられ、生産量が多く値段の幅も広い。芽が黄白色で白葉単叢とも呼ばれ、嶺頭単叢のもとにもなった系統。単叢の入門として勧められることが多い。
- 木柵鉄観音台北市文山区木柵で作られる鉄観音。清の光緒年間に安渓から鉄観音の苗と製法が持ち込まれ、いまも酸化と焙煎をしっかりかける伝統製法を守っている。安渓の清香型が主流になったいま、昔ながらの重焙煎の鉄観音が飲める産地として知られ、鉄観音品種で作ったものは正欉鉄観音と呼ばれる。
- 梨山茶台湾中部、台中市和平区の梨山一帯で作られる高山烏龍茶。標高1800〜2600メートルの茶園は台湾で最も高く、福寿山、華崗、大禹嶺などの茶区を含む。青心烏龍を清香型に仕上げ、林檎や桃にたとえられる香りと厚い甘みで、台湾高山茶の最上位に置かれる。生産量が少なく、名前を借りた茶も多い。
- 嶺頭単叢広東省潮州市饒平県坪渓鎮嶺頭村で生まれた単叢。1961年、鳳凰水仙の茶園で芽が早く葉が黄緑の一株が見つかり、選抜された品種で作る。葉が光に透けて白く見えることから白葉単叢とも呼ぶ。蜜と花の甘い香り(蜜韻)と滑らかな味が特徴で、鳳凰単叢より渋みが少なく飲みやすい。
よく出る用語
参考リンク
- GB/T 30766-2014 茶叶分类(国家標準) — 烏龍茶の定義と閩南・閩北・広東・台式の区分
- GB/T 30357.1-2013 乌龙茶 第1部分:基本要求(国家標準) — 烏龍茶の工程と品種別の製品区分
- 消観茶論 第151回: ISOの国際標準規格『烏龍茶』の内容を考察 — 国際規格での烏龍茶の定義
- 消観茶論 第57回: 中国における"台湾烏龍茶"から考える — 国家標準が「台式烏龍茶」を製法で定義していること
- HOJO: 香りを楽しむ!烏龍茶のすべてが分かるまとめ — 産地ごとの烏龍茶の性格と製法の日本語での整理
- HOJO: 台湾烏龍茶の発酵現場潜入!花のような香りはこうして作られる — 做青の実際
- 『はじめての中国茶とおやつ』甘露 著(誠文堂新光社) p.8-11 — 烏龍茶の工程