台湾
読み たいわん現地音 タイワン拼音 Táiwān中国語 臺灣別名 台灣、臺灣、台湾茶、高山茶、台湾烏龍、Taiwan
中国大陸の東南、福建省の対岸にある島で、全島の三分の二が山地です。四大茶区では華南茶区に属します。北回帰線を境に北は亜熱帯、南は熱帯の気候で、南北に走る山脈が霧の多い高地を作り、烏龍茶の栽培に向いています。省ではありませんが、このサイトでは産地の階層として中国の省と同じ位置に置いています。
台湾茶の成り立ち
台湾の茶は19世紀に福建から茶樹と製法が伝わって始まり、日本統治期の1903年に設立された製茶試験場(現在の農業部茶及飲料作物改良場)が品種改良と製法の研究を担ってきました。福建南部の球状の烏龍茶製法を受け継ぎながら、酸化を軽くして緑色に仕上げる清香型、高山の茶園、金萱や翠玉といった改良品種など、独自の方向に発展しました。
生産量は年間1万2000トン前後で中国大陸の産地に比べれば小さく、そのうち6割近くを南投が占めます。次いで嘉義県(阿里山)、新北市(文山包種)、桃園、苗栗、新竹(東方美人)と続きます。
主な台湾茶
| 茶 | 産地 | 内容 |
|---|---|---|
| 高山茶(清香型球形烏龍茶) | 阿里山、杉林渓、梨山など海抜1000メートル以上 | 軽い酸化、球状。台湾の公式定義では海抜1000メートル以上の茶園の茶 |
| 凍頂烏龍 | 南投県鹿谷郷 | 中程度の酸化と焙煎。台湾茶の代名詞 |
| 文山包種 | 新北市坪林など | 酸化の軽い条索状の烏龍茶 |
| 東方美人(白毫烏龍) | 新竹・苗栗 | ウンカに噛ませた葉で作る酸化の重い烏龍茶 |
| 木柵鉄観音 | 台北市文山区 | 焙煎の強い球状の鉄観音 |
| 紅玉(台茶18号) | 南投県魚池郷 | 台湾原生種とミャンマー種を交配した品種の紅茶 |
分類の二系統
台湾の茶改場は、製法による分類(緑茶・黄茶・白茶・青茶・紅茶・黒茶)と並行して、酸化の程度による分類(不発酵茶・部分発酵茶・全発酵茶)を公式に使っています。日本で「発酵度で分ける」説明が広まった背景には、台湾経由で入ってきたこの分類があります。
「台湾烏龍茶」という名前
中国の国家標準は「台式(台湾)烏龍茶」を、台湾の伝統的な製法で作られた顆粒状の製品と製法で定義しており、産地が台湾であることを条件にしていません。このため中国大陸では福建や雲南で作られた球状の烏龍茶が「台湾烏龍茶」として流通しています。台湾側には台湾烏龍茶を地理的表示として国際的に定義した仕組みがなく、反論の根拠が弱いのが現状です。
台湾国内でも、人手不足や茶価の伸び悩みから、摘採の適期を外したり空調萎凋に頼ったりせざるを得ない現場があり、産地が台湾であれば品質が保証されるわけではない、という指摘があります。
日本との関係
日本で紹介される中国茶の作法や茶器(茶盤、茶海、聞香杯)の多くは、台湾で1970年代以降に整えられた茶芸がもとになっています。日本の中国茶のイメージは台湾茶を通して形作られた部分が大きく、台湾茶と中国大陸の茶では学び方も変えたほうがよい、という見方もあります。
下位の産地
この産地の茶葉
- 阿里山高山茶台湾嘉義県の阿里山一帯、標高1000メートル以上の茶園で作られる、酸化の軽い球状の烏龍茶。冷涼で霧の多い高地で育つため渋みが少なく甘く滑らかで、台湾の三大高山茶区の中で生産量が最も多い。
- 翠玉茶台湾の茶業改良場が育成した品種、台茶13号で作る烏龍茶で、南投などで球形烏龍茶や包種茶に仕立てる。金萱と同時に命名された姉妹品種で、野の花やモクレンにたとえられる華やかな花の香りが持ち味。
- 大禹嶺台湾中部、花蓮・台中・南投の境にある峠の大禹嶺の茶園で作られた清香型の高山烏龍茶。標高2300〜2600メートルの台湾で最も高い茶産地とされるが、2015年に主要な茶園が伐採され、名前だけを借りた茶が多く出回る。
- 凍頂烏龍台湾南投県鹿谷郷の凍頂山周辺で作られる烏龍茶で、長く台湾茶の代名詞とされてきた。青心烏龍を半球状に巻き、中程度の酸化と焙煎で仕上げるのが本来の姿だが、産地や焙煎の異なる茶も同じ名で流通する。
- 東方美人台湾北西部、新竹の丘陵などで作られる酸化の最も重い烏龍茶で、紅茶に近い性格を持つ。小緑葉蝉に汁を吸われた芽葉だけを夏に摘んで作るため蜜や熟した果実のような香りが出るもので、白毫烏龍や膨風茶とも呼ぶ。
- 台湾高山茶台湾で標高1000メートル以上の茶園で摘んだ葉から作る、酸化の軽い球状の烏龍茶の総称。冷涼で霧が多く芽がゆっくり育つため渋みが少なく甘く、1980年代以降に凍頂烏龍に代わって台湾茶の主流になった。
- 紅烏龍台湾台東県鹿野で2008年に開発された烏龍茶で、酸化を紅茶に近いところまで進めて焙煎で仕上げる。烏龍茶の中で最も酸化度が高く水色は橙紅色で、夏秋の茶葉を活かすために生まれ、冷茶にも向く。
- 紅玉台湾南投県魚池郷の日月潭周辺を主産地とする紅茶で、茶業改良場が育成した品種の台茶18号で作る。大葉種と台湾原生の山茶を交配した品種で、薄荷と肉桂にたとえられる香りと濃い紅色の水色が名前の由来。
- 金萱茶台湾の茶業改良場が育成した品種の台茶12号で作る烏龍茶で、阿里山など各地で広く栽培される。ミルクやバターを思わせる甘い香りが持ち味で、清香型で低〜中標高の茶によく出るもので、香料で着香したミルク烏龍とは別物。
- 梨山茶台湾台中市和平区の梨山一帯で作られる高山烏龍茶で、標高1800〜2600メートルの茶園は台湾で最も高い。青心烏龍を清香型に仕上げ、林檎や桃にたとえられる香りと厚い甘みがあるが、生産量が少なく名前を借りた茶も多い。
- 蜜香紅茶台湾で、ウンカに汁を吸われた芽葉を紅茶の製法で仕上げ、蜜とマスカットのような蜜香を持たせた茶。東方美人と同じ仕組みだが、虫まかせの原料なので出来のばらつきが大きく、上手なものは東方美人に匹敵する。
- 木柵鉄観音台北市文山区木柵で作られる烏龍茶で、中程度に酸化させ焙煎を重くかける昔ながらの鉄観音。安渓で焙煎の軽い清香型が主流になったいま、伝統の重焙煎が飲める産地として知られ、鉄観音品種で作ったものを正欉鉄観音と呼ぶ。
- 杉林渓台湾南投県竹山鎮、杉の森と渓谷に囲まれた標高1500〜1900メートルの茶園で作られる高山烏龍茶。酸化を浅くした清香型で、杉を思わせる清涼感のある香りと冷たい鉱泉のような澄んだ甘さが特徴。
- 四季春台湾南投県名間郷の松柏嶺を主産地に、年に何度も摘める品種の四季春で作る手ごろな烏龍茶。梔子のような濃い花の香りと軽い甘みがあり冷やしても香りが残るため、冷泡の定番でありタピオカミルクティーなど飲料茶の主要な原料でもある。
- 文山包種台湾北部、新北市坪林を中心とする文山茶区の烏龍茶で、台湾の烏龍茶の中で最も酸化が軽い。球状に丸めず条索状に仕上げて花のような清らかな香りを重んじ、名前は茶を紙で包んで売った包装に由来する。酸化が軽いぶん製法は難しい。
参考リンク
- 農業部茶及飲料作物改良場: 臺灣茶每年總產值是多少?(農業知識入口網) — 栽培面積・生産量・産値の推計
- 農業部: 台灣茶葉生產現況與輔導措施 — 主要産区の分布と面積の割合
- 農業知識入口網 茶葉主題館: 清香型球形烏龍茶(高山茶) — 高山茶の定義(海抜1000メートル以上)と産地
- 農業知識入口網 茶葉主題館: 凍頂烏龍茶 — 凍頂烏龍茶の公式説明
- 消観茶論 第127回: お茶の分類と発酵度が結びついた理由 — 台湾の茶改場が公式に用いる二系統の分類
- 消観茶論 第57回: 中国における"台湾烏龍茶"から考える — 中国の国家標準における「台式烏龍茶」の定義と台湾の茶業の現状