台湾
読み たいわん現地音 タイワン拼音 Táiwān中国語 臺灣別名 台灣、臺灣、台湾茶、高山茶、台湾烏龍、Taiwan
烏龍茶の一大産地。19世紀に福建から茶樹と製法が伝わり、球状の高山茶・凍頂烏龍、文山包種、東方美人、紅玉紅茶など独自の茶が発達した。生産量の6割近くを南投県が占め、公式には不発酵・部分発酵・全発酵の三分類も使う。
中国大陸の東南、福建省の対岸にある島で、全島の三分の二が山地です。四大茶区では華南茶区に属します。北回帰線を境に北は亜熱帯、南は熱帯の気候で、南北に走る山脈が霧の多い高地を作り、烏龍茶の栽培に向いています。省ではありませんが、このサイトでは産地の階層として中国の省と同じ位置に置いています。
台湾茶の成り立ち
台湾の茶は19世紀に福建から茶樹と製法が伝わって始まり、日本統治期の1903年に設立された製茶試験場(現在の農業部茶及飲料作物改良場)が品種改良と製法の研究を担ってきました。福建南部の球状の烏龍茶製法を受け継ぎながら、酸化を軽くして緑色に仕上げる清香型、高山の茶園、金萱や翠玉といった改良品種など、独自の方向に発展しました。
生産量は年間1万2000トン前後で中国大陸の産地に比べれば小さく、そのうち6割近くを南投が占めます。次いで嘉義県(阿里山)、新北市(文山包種)、桃園、苗栗、新竹(東方美人)と続きます。
主な台湾茶
| 茶 | 産地 | 内容 |
|---|---|---|
| 高山茶(清香型球形烏龍茶) | 阿里山、杉林渓、梨山など海抜1000メートル以上 | 軽い酸化、球状。台湾の公式定義では海抜1000メートル以上の茶園の茶 |
| 凍頂烏龍 | 南投県鹿谷郷 | 中程度の酸化と焙煎。台湾茶の代名詞 |
| 文山包種 | 新北市坪林など | 酸化の軽い条索状の烏龍茶 |
| 東方美人(白毫烏龍) | 新竹・苗栗 | ウンカに噛ませた葉で作る酸化の重い烏龍茶 |
| 木柵鉄観音 | 台北市文山区 | 焙煎の強い球状の鉄観音 |
| 紅玉(台茶18号) | 南投県魚池郷 | 台湾原生種とミャンマー種を交配した品種の紅茶 |
分類の二系統
台湾の茶改場は、製法による分類(緑茶・黄茶・白茶・青茶・紅茶・黒茶)と並行して、酸化の程度による分類(不発酵茶・部分発酵茶・全発酵茶)を公式に使っています。日本で「発酵度で分ける」説明が広まった背景には、台湾経由で入ってきたこの分類があります。
「台湾烏龍茶」という名前
中国の国家標準は「台式(台湾)烏龍茶」を、台湾の伝統的な製法で作られた顆粒状の製品と製法で定義しており、産地が台湾であることを条件にしていません。このため中国大陸では福建や雲南で作られた球状の烏龍茶が「台湾烏龍茶」として流通しています。台湾側には台湾烏龍茶を地理的表示として国際的に定義した仕組みがなく、反論の根拠が弱いのが現状です。
台湾国内でも、人手不足や茶価の伸び悩みから、摘採の適期を外したり空調萎凋に頼ったりせざるを得ない現場があり、産地が台湾であれば品質が保証されるわけではない、という指摘があります。
日本との関係
日本で紹介される中国茶の作法や茶器(茶盤、茶海、聞香杯)の多くは、台湾で1970年代以降に整えられた茶芸がもとになっています。日本の中国茶のイメージは台湾茶を通して形作られた部分が大きく、台湾茶と中国大陸の茶では学び方も変えたほうがよい、という見方もあります。
下位の産地
この産地の茶葉
- 阿里山高山茶台湾嘉義県阿里山一帯の標高1000メートル以上の茶園で作られる、酸化の軽い球状の烏龍茶。台湾の公式定義では海抜1000メートル以上の茶を高山茶と呼び、阿里山は梨山・杉林渓と並ぶ三大高山茶区で生産量が最も多い。青心烏龍が主で金萱も栽培される。
- 翠玉茶台湾の茶業改良場が育成した品種「台茶13号」(翠玉)で作る烏龍茶。金萱(台茶12号)と同じ1981年に発表された姉妹品種で、野の花や玉蘭にたとえられる華やかな香りが特徴。金萱ほど広まらなかったが、南投などで包種茶や球形烏龍茶に仕立てられ、金萱・四季春と並ぶ台湾の主要品種のひとつ。
- 大禹嶺台湾中部、花蓮県・台中市・南投県の境にある大禹嶺の茶園で作られた高山烏龍茶。標高2300〜2600メートルで台湾最高の茶産地とされ、梨山茶区に属する。生産量はごくわずかで、2015年に主要な茶園が伐採されたあとも大禹嶺の名で売られる茶は多く、産地名の扱いに最も注意が要る茶。
- 凍頂烏龍台湾南投県鹿谷郷の烏龍茶で、台湾茶の代名詞。青心烏龍種を半球状に巻き、中程度の酸化と焙煎で仕上げる。台湾の公式分類では「焙香型球形烏龍茶」。名前が広く使われるため、産地・品種・焙煎の異なる茶が同じ名で流通している。
- 東方美人台湾新竹・苗栗の丘陵で作られる、酸化の最も重い烏龍茶。小緑葉蝉(ウンカ)に汁を吸われた芽葉だけを夏に摘み、蜜と熟した果実のような香りに仕上げる。白毫烏龍、膨風茶とも呼ばれ、イギリスの女王が名付けたという伝承がある。
- 紅烏龍台湾東部、台東県鹿野で2008年に茶業改良場台東分場が開発した烏龍茶。烏龍茶の製法で酸化を紅茶に近いところまで進め、焙煎をかけて仕上げる。烏龍茶の中で最も酸化度が高く、水色は紅茶のように橙紅色。夏秋の茶葉を活かすために生まれ、冷茶にも向く新しい台湾茶。
- 紅玉台湾の茶業改良場が台湾原生の山茶とミャンマー大葉種を交配して育成し、1999年に命名した品種「台茶18号」で作る紅茶。南投県魚池郷の日月潭周辺が主産地で、薄荷と肉桂にたとえられる独特の香りと濃い紅色の水色から紅玉と名付けられた。
- 金萱茶台湾の茶業改良場が育成した品種「台茶12号」(金萱)で作る烏龍茶。ミルクやバターのような甘い香りが特徴で、清香型に仕上げた低〜中標高の茶で最も香りが出る。阿里山や南投で広く栽培され、飲みやすさから台湾茶の入門として人気。香料でミルクの香りを付けた「ミルク烏龍」とは別物。
- 梨山茶台湾中部、台中市和平区の梨山一帯で作られる高山烏龍茶。標高1800〜2600メートルの茶園は台湾で最も高く、福寿山、華崗、大禹嶺などの茶区を含む。青心烏龍を清香型に仕上げ、林檎や桃にたとえられる香りと厚い甘みで、台湾高山茶の最上位に置かれる。生産量が少なく、名前を借りた茶も多い。
- 蜜香紅茶台湾で、小緑葉蝉(ウンカ)に汁を吸われた芽葉を紅茶に仕立てたもの。東方美人と同じ仕組みで蜜とマスカットのような蜜香が生まれ、新竹・苗栗のほか花蓮の瑞穂が産地として知られる。虫まかせの原料ゆえ製茶の出来にばらつきが大きい。
- 木柵鉄観音台北市文山区木柵で作られる鉄観音。清の光緒年間に安渓から鉄観音の苗と製法が持ち込まれ、いまも酸化と焙煎をしっかりかける伝統製法を守っている。安渓の清香型が主流になったいま、昔ながらの重焙煎の鉄観音が飲める産地として知られ、鉄観音品種で作ったものは正欉鉄観音と呼ばれる。
- 杉林渓台湾南投県竹山鎮の杉林渓一帯、標高1500〜1900メートルで作られる高山烏龍茶。杉の森と渓谷に囲まれた茶園で、清涼感のある香りと澄んだ甘さが特徴。龍鳳峡、羊仔湾など茶区ごとの名前でも売られ、梨山、阿里山と並ぶ台湾高山茶の代表的な産地。
- 四季春台湾で、1980年代に台北の木柵の農家が見つけた品種「四季春」で作る烏龍茶。年に何度も摘めて香りが濃いことから名付けられ、南投県名間郷の松柏嶺で大量に栽培される。梔子のような花の香りと軽い甘みで、手ごろな値段の日常の茶であり、タピオカミルクティーなど台湾の飲料茶の主要な原料でもある。
- 文山包種台北の南、新北市坪林を中心とする文山茶区の烏龍茶で、台湾の烏龍茶の中で最も酸化が軽い。球状に丸めず条索状に仕上げ、花のような清らかな香りを重んじる。「包種」は茶を紙で包んで売った包装に由来し、台湾で最初に烏龍品種が植えられた地域の茶とされる。
参考リンク
- 農業部茶及飲料作物改良場: 臺灣茶每年總產值是多少?(農業知識入口網) — 栽培面積・生産量・産値の推計
- 農業部: 台灣茶葉生產現況與輔導措施 — 主要産区の分布と面積の割合
- 農業知識入口網 茶葉主題館: 清香型球形烏龍茶(高山茶) — 高山茶の定義(海抜1000メートル以上)と産地
- 農業知識入口網 茶葉主題館: 凍頂烏龍茶 — 凍頂烏龍茶の公式説明
- 消観茶論 第127回: お茶の分類と発酵度が結びついた理由 — 台湾の茶改場が公式に用いる二系統の分類
- 消観茶論 第57回: 中国における"台湾烏龍茶"から考える — 中国の国家標準における「台式烏龍茶」の定義と台湾の茶業の現状