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鳳凰単叢(ほうおうたんそう)

読み ほうおうたんそう現地音 フォンホァンダンツォン拼音 Fènghuáng Dāncōng中国語 凤凰单丛 / 鳳凰單欉別名 鳳凰単欉、鳳凰単枞、凤凰单丛、単叢、単欉、単枞、Fenghuang Dancong、Phoenix Dancong、蜜蘭香、鴨屎香、宋種、芝蘭香、黄枝香、姜花香、桂花香、八仙、大烏葉、杏仁香、夜来香、東方紅、茶中香水

分類青茶(烏龍茶) / 広東烏龍
産地鳳凰山
品種鳳凰水仙(ほうおうすいせん)
製法萎凋(いちょう) → 做青(さくせい) → 殺青(さっせい) → 揉捻(じゅうねん) → 焙火(ばいか)
外観太めの条索状で、緑がかった褐色から黒褐色。老欉は葉が大きく黒い。高山の茶は葉が締まって小ぶり
水色軽火は明るい金色、足火は橙色から橙紅色
香り花・果実・蜜を思わせる強い自然の香り。蜜蘭香はライチ、姜花香は生姜の花など香りの型ごとに違い、「茶中香水」と呼ばれる
味甘く厚みがあり、余韻が際立って長い。上質なものは渋みがなく、産毛の多い若い茶や夏茶は渋みが出る

広東省(かんとんしょう)潮州市の鳳凰山(ほうおうざん)で作られる烏龍茶で、武夷岩茶(ぶいがんちゃ)、安渓鉄観音と並ぶ中国の三大烏龍茶産地の茶です。在来の群体種(ぐんたいしゅ)である鳳凰水仙(ほうおうすいせん)の中から香りの優れた株を選び、株ごと、あるいは同じ香りの型ごとに別々に仕上げることから「単叢(たんそう)」(一株の意)と呼ばれます。産地では「一株ごとに摘み、一株ごとに作り、一株ごとに保管し、一株ごとに売る」と説明されます。2010年に地理標志産品に指定され、潮州(ちょうしゅう)の単叢茶文化システムは世界農業遺産の予備リストにも入りました。「単欉」「単枞」は同じ字の異体です。香りの強さから「茶中香水(ちゃちゅうこうすい)」(茶の中の香水)という異名もあります。

香りの型で名前がつく

鳳凰単叢は銘柄が多く、香りの型(清香型と濃香型(せいこうがたとのうこうがた))で名前をつけます。1990年代の調査で18の香型に分けられ、そこから「十大香型」(黄枝香(こうしこう)、芝蘭香(しらんこう)、玉蘭香(ぎょくらんこう)、蜜蘭香(みつらんこう)、杏仁香(きょうにんこう)、姜花香(きょうかこう)、肉桂香(にっけいこう)、桂花香(けいかこう)、夜来香(やらいこう)、茉莉香(まつりこう))が広く知られるようになりました。名前の付け方は香りだけでなく、地名、樹形、葉の形、伝説などさまざまで、同じ木に複数の名前があることもあります。

銘柄香りの由来性格
蜜蘭香(みつらんこう)蜜と蘭ライチやマスカットにたとえられる甘い香り。最も流通が多く、入門にも向く。摘採が最も早い
鴨屎香(おうしこう)名前は「アヒルの糞」。産地の土の色や、他人に真似されないための隠語という伝承。2014年に銀花香(ぎんかこう)と改名花の香りとミルクのような丸み。近年最も人気
宋種(そうしゅ)南宋(なんそう)の皇帝にちなむ伝承を持つ古木の系統。東方紅(とうほうこう)、大叢茶(だいそうちゃ)などの別名もある樹齢の高い木から作られ高価。産地で単に宋種と言えば黄枝香の系統を指す
芝蘭香(しらんこう)・黄枝香蘭、クチナシ古くからの代表的な型
姜花香生姜の花香りが突出して強く、産地で人気。通天香(つうてんこう)とも
桂花香・杏仁香金木犀(きんもくせい)、杏仁杏仁香は杏仁豆腐のような香りにたとえられる
夜来香夜来香(月下香)の花粉っぽく甘い花の香り
八仙(はっせん)・大烏葉(だいうよう)八仙は清末に大烏葉の挿し木八株が別々の茶園でそれぞれ育った伝承(八仙過海(はっせんかかい))から、大烏葉は大きく黒い葉香りに透明感と清涼感がある。八仙は摘採が最も遅い

花や果実、蜜のような香りは着香ではなく、鳳凰水仙(ほうおうすいせん)の株ごとの性質と製法によるものです。はじめて飲むと着香茶と錯覚するほどで、名前の難しさに反して初心者にも分かりやすい茶です。一方、名前どおりに香るとは限らず、産地の人でもブラインドで香型を当てるのは難しいとされます。

山場と標高

鳳凰単叢は、どの村のどの高さの木から作られたか(山場(さんじょう))で味と値段が決まります。産地では麓の低山、山腹の中山、おおむね標高600〜800メートル以上の高山に分け、高くなるほど味が濃く澄み、喉に戻る甘さと余韻が長くなります。広東省の研究者が鳳凰鎮の茶園を標高別に分析した研究でも、高山と中山の茶は低山より成分の量が多く、香気の構成も違うことが示されています。商品名に付く烏崠(うとう)、大庵(だいあん)、李仔坪(りしへい)、甜竹坑(てんちくこう)、庵角(あんかく)、青麻園(せいまえん)、坪坑頭(へいこうとう)といった語はこの村や地区の名前です。

鳳凰鎮の地図。中央の鳳凰鎮の北西に烏崠山と烏崠村、西に最高峰の鳳鳥髻、東に大質山があり、標高帯を四段階で塗り分けている

鳳凰鎮の地形と主な村。標高は NASA の SRTM、地名・道路・水面は OpenStreetMap のデータから作図した。産地で言う低山・中山・高山は、おおまかにこの図の400メートル未満、400〜700メートル、700メートル以上の帯に当たる。各山場の位置と標高は鳳凰単叢を選ぶときの六つの軸。山場・樹齢・香型・焙煎・季節・等級の表にまとめた。

単叢・老欉(ろうそう)・単株(たんかぶ)・母樹

本来の「単叢」は一株ごとに摘んで別々に仕上げる意味ですが、いまは鳳凰山産の烏龍茶全体を指して使われ、茶園で作られた安価なものも単叢の名で流通します。樹齢80〜100年以上の木から作ったものを老欉(老叢)、一本の木だけから作ったものを単株、その香型の系統の元になった原木を母樹(ぼじゅ)と呼びます。烏崠山の有名な古木は一本で数百万円分の茶を産み、有名産地の価格は近年高騰しています。香りが際立たなかった株の茶は「鳳凰水仙」として単叢より安く売られます。詳しくは単株・老欉(たんかぶ・ろうそう)を参照してください。

製法と焙煎

晒青(さいせい)、晾青(りょうせい)、做青(さくせい)、殺青、揉捻、烘乾(こうかん)という烏龍茶の製法で条索状に仕上げます。做青は台湾の「揺青(ようせい)」より強めに葉を傷つける「浪青」と呼ばれ、酸化はやや重めです。ここまでが初製で、乾燥を終えた茶は毛茶(もうちゃ)と呼ばれ、茎が残ったままの荒々しい状態です。産地では春の製茶期にこの毛茶を試飲して買い付けを決めます。

精製では焙火(ばいか)をかけ、茎や大きな葉を選別して製品にします。潮州では火の入り方を軽火(けいか)、中火、足火(そくか)などと呼び分け、炭焙煎の回数(一回、二回、三回以上)で語ることも多いです。一回ごとに数時間から十時間ほど炭火で焙じ、回の間に一か月以上寝かせて火を落ち着かせます。焦がさない低温で雑味を抜いて透明感のある香りにするのが軽火(清香型)、焙煎を重ねて乾燥果実やカラメルのような香りに育てるのが足火(濃香型)です。軽火は水分が残るので一年以内に飲み切るのが目安で、足火は数年置け、潮州では一年以上寝かせてから飲む人も多いです。産地には「茶が君、火は臣」という言い方があり、火の痕跡を残さず茶の香りを立たせるのが上手な焙煎とされます。炭焙と電気焙煎があり、炭焙のほうが手間がかかる分、評価は高いです。

味

味の特徴は際立って長い余韻です。鳳凰山の茶樹は剪定せず自然樹形で育てられ、ゆっくり成長するため、安渓や台湾の烏龍茶と比べても後味が長く続きます。「単叢は渋い」という印象は夏摘みや肥料の多い若い茶園の茶によるもので、春摘みで肥料の少ない茶は渋みがなく甘い、と産地の人は言います。標高の高い老欉の茶に出る深い余韻は山韻(さんいん)と呼ばれます。

季節と等級

主力は春茶で、3月末から5月にかけて低山から高山へ、蜜蘭香から八仙へと順に摘まれます。炭焙煎を重ねる茶は市場に出るのが遅くなるので、摘採の早い茶が後から出てくることも普通です。秋の終わりから初冬に摘む冬茶が雪片(せっぺん)で、一年で最も香りが高く、渋みが少なく、春茶より手ごろです。

焙煎後の選別で製品から外された茶にも名前があり、大きな葉が主体の二米、茎の多い茶頭は製品よりずっと安く、潮州の食堂や家庭の日常茶として大量に飲まれています(茶頭・二米(ちゃとう・にべい))。

商品名の読み方は鳳凰単叢を選ぶときの六つの軸。山場・樹齢・香型・焙煎・季節・等級にまとめました。

茶器と水

潮州では工夫茶(こうふちゃ)の作法で淹れ、器は白磁の蓋碗(がいわん)が標準です。口が広く葉の開きと蓋の裏の香りを確かめやすいうえ、香りを吸わないので、産地の茶師や茶商が茶を見るときも蓋碗を使います。陶器の茶壺(ちゃこ)では香りや余韻が平板になって茶の差が分かりにくくなることがあり、潮州産の茶壺だから合うとは限らないとされます。ただし潮州の楓渓で作られる薄手の潮州朱泥手拉壺(ちょうしゅうしゅでいしゅらこ)は例外的に単叢向きの器で、胎が薄いので予熱がすぐ入り、短時間の抽出のあいだ湯を高温に保てます。作家の間では、背の低い壺は葉が開きやすく軽火の香りを立たせるのに、背の高い壺はじっくり出るので足火に向く、という使い分けも語られます。

水は硬度の低い軟水のほうが香りが立ちます。硬度の高い水では湯気に立つ香りがはっきり弱くなるので、いつもの茶が香らないと感じたら、茶葉より先に水を疑うのが近道です。手順そのものは下の「鳳凰単叢の淹れ方」にまとめています。

鳳凰単叢の銘柄

  • 蜜蘭香みつらんこう鳳凰山の烏龍茶、鳳凰単叢の香型のひとつで、蜜の甘さと蘭の花の香りを合わせ持ち、最も生産量が多い。若木から老欉まで品質と値段の幅が最も広く、単叢の入門に勧められる一方で老欉は愛好家が探す茶。
  • 鴨屎香おうしこう鳳凰山の烏龍茶、鳳凰単叢の香型のひとつで、2010年代に中国で爆発的に人気になった系統。名前は鴨の糞の意味だが、実際は金銀花や梔子にたとえられる鋭い花の香りで、伝承では苗を盗まれないよう悪い名を付けたとされる。
  • 芝蘭香しらんこう鳳凰山の烏龍茶、鳳凰単叢の香型のひとつで、蘭の花のような細く鋭い香りを持ち、香りの高さで評価される。味は鮮やかで甘く軽やかな、香りで飲ませる単叢で、焙煎を重ねると果実の香りと甘さが増す。八仙はこの系統を代表する名前。
  • 宋種そうしゅ鳳凰山の烏龍茶、鳳凰単叢のうち最も古いとされる茶樹の系統で、宋代から続く木という伝承が名前の由来。母樹から挿し木で増やした木の茶が宋種として売られ、老木のものは味の厚みと余韻の深さで評価され、単叢で最も高い値がつく。

鳳凰単叢の淹れ方

産地の茶師や農家の基準は「多めの茶葉、沸騰した湯、小さな器、短い抽出」で、鳳凰単叢はこの前提で作られています。満水100ミリリットル前後の蓋碗に茶葉をたっぷり入れ、器と葉をよく予熱してから沸騰したての湯を注ぎ、蓋をして数秒で注ぎ切る人が多いです。1煎目の前に短く湯を通す洗茶(産地では醒茶と言う)をして葉に熱と水分を入れる人が多く、老欉や古樹は煎が持つので惜しまずに行えます。2煎目以降も短く切り、味を見ながら少しずつ延ばして10煎近く楽しみます。茶葉を減らして長く置くと香りの芯がぼやけて水っぽくなるので、湯温を下げて穏やかに出そうとするより、必要な熱をきちんと当てるのが要点です。選別茶の茶頭は反対に、量を気にせず放り込んで熱湯を注ぐ気軽な飲み方や、濃く出して氷で急冷する冷茶に向きます。

淹れ方はひとつではありません。ここでは多くの人がどう淹れているかを書いています。

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