中国茶辞典中国茶・台湾茶の用語とコラム

工夫茶(こうふちゃ)

読み こうふちゃ現地音 ゴンフーチャ拼音 gōngfuchá別名 くんふうちゃ、功夫茶、潮州工夫茶、工夫式、工夫紅茶

小さな茶壺や蓋碗に多めの茶葉を入れ、沸騰した湯で短く抽出して何煎も淹れる淹れ方。広東省潮州で体系化され、潮州工夫茶芸は2008年に中国の国家級無形文化遺産に登録された。

「工夫」は手間や労力をかけるという意味で、工夫茶は少量の茶を丁寧に何煎も楽しむ淹れ方の総称です。中国語では功夫茶とも書き、日本語では慣用的に「くんふうちゃ」と読まれることもあります。広東省潮州の工夫茶がその原型とされ、小さな茶壺(ちゃこ)、小さな杯、火炉と湯沸かしを組み合わせた作法が体系化されています。

潮州工夫茶

潮州工夫茶芸は2008年に中国の国家級無形文化遺産に登録され、2022年にはユネスコの無形文化遺産「中国伝統制茶技芸とその関連習俗」の構成要素にもなりました。器の準備から火起こし、茶壺を温める、茶葉を入れる、湯を注ぐ、杯に注ぎ分ける、香りを聞くまでを二十一の手順にまとめた「二十一式」が広く知られています。

潮州(ちょうしゅう)では工夫茶は儀式ではなく日常です。家でも店先でも、小さな茶壺と三つの杯を置いて鳳凰単叢(ほうおうたんそう)を淹れ、客が来れば杯を勧める、という風景がいまも続いています。杯が三つなのは「品」の字にちなむと言われます。

淹れ方の要点

工夫式の核心は、茶器と茶葉をしっかり温めてから、高温で短時間ずつ抽出することです。

  1. 茶壺か蓋碗(がいわん)に沸騰した湯を注いで温める。
  2. 茶葉を多めに入れる。器の三分の一から半分が目安で、鳳凰単叢のように条索状の茶ならさらに多めに入れる人もいる。
  3. 沸騰した湯を注いですぐに捨てる。茶葉を温めて開かせるためで、洗茶(せんちゃ)と呼ばれる。
  4. 1煎目は数秒から十数秒で注ぎ出す。緊圧された餅茶(へいちゃ)などはやや長め。
  5. 2煎目以降は湯を通すように短く。煎を重ねるごとに少しずつ延ばす。

沸騰した湯でも、器と葉に触れると温度は大きく下がります。予熱を重ねて葉の温度を高く保つことで香りが立ち、2煎目、3煎目も安定して淹れられる、というのが工夫式の考え方です。

「工夫紅茶」との違い

紅茶の世界でも「工夫紅茶」という言葉があり、祁門紅茶(きもんこうちゃ)滇紅(てんこう)がそう呼ばれます。こちらは淹れ方ではなく製法の名前で、萎凋や乾燥後の焙煎に手間をかけて作った紅茶を指します。武夷山の正山小種(せいざんしょうしゅ)が先駆けとされます。同じ「工夫」の字でも、淹れ方の工夫茶と製法の工夫紅茶は別の概念です。

日本での受け止め

日本で紹介される中国茶の作法の多くは、この潮州工夫茶か、台湾で整えられた茶芸がもとになっています。茶盤(ちゃばん)、茶海、聞香杯(もんこうはい)といった道具立ては台湾で発達したもので、潮州の原型にはありません。作法として覚えるより、「温めて、多めに入れて、短く、何煎も」という考え方を押さえておくと、どの茶にも応用できます。

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