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正山堂(せいざんどう)

読み せいざんどう現地音 ジェンシャンタン拼音 Zhèngshāntáng別名 正山茶業、正山茶业、福建正山堂茶業、元正、江元勲、江元勋、駿眉中国、骏眉中国、駿眉製法、骏眉工艺、Zhengshantang

福建省武夷山桐木で正山小種を作り続けてきた江氏の茶業会社と、その高級紅茶ブランド。2005年に金駿眉を生み出し、その製法を「駿眉製法」として標準化して、2010年以降は河南や貴州など他省の産地と組んで各地の茶葉で作る駿眉系の紅茶を展開している。

武夷山(ぶいさん)桐木(とうぼく)正山小種(せいざんしょうしゅ)を作り続けてきた(こう)氏の茶業会社と、その高級紅茶ブランドの名前です。2005年に金駿眉(きんしゅんび)を生み出して中国国内の高級紅茶ブームを起こし、その後は金駿眉(きんしゅんび)の製法を「駿眉製法(しゅんびせいほう)」として標準化し、他省の産地と組んで各地の茶葉で作る駿眉系の紅茶を広げています。正山小種(せいざんしょうしゅ)の歴史の担い手であると同時に、21世紀の中国紅茶の流れを作った会社と言えます。

江氏と正山小種

江氏は宋末に河南の固始(こし)から福建に移ってきた一族で、明の中ごろ(1568年ごろ)に先祖が桐木で紅茶の原型となる正山小種を作り始めたと伝えられます。この伝承の裏付けとなる史料は限られますが、江氏が桐木で代々紅茶を作ってきたことは確かで、現在の当主江元勲(こうげんくん)は正山小種の二十四代目の継承者を名乗ります。つまり正山堂は緑茶や烏龍茶の一族が紅茶に転じたのではなく、もともと紅茶の家です。

正山小種はもともと輸出向けの茶で、中国国内では紅茶を飲む習慣が薄く、国内で流通する紅茶は「濃くて赤くて渋い」安価な茶という印象でした。1990年代に入ると輸出も振るわず、桐木では茶葉が売れ残り、茶園を放棄して竹に植え替える農家も出るほどでした。江元勲は1997年に自分の茶廠を立ち上げ、2002年に正山茶業有限公司に改組し、輸出向けの正山小種と有機認証の取得で足場を固めます。

金駿眉の開発

転機は2005年です。北京から桐木を訪れた茶愛好家の張孟江(ちょうもうこう)らが「芽だけで最高級の正山小種を作れないか」と持ちかけ、江元勲が率いる製茶チームが試作に取り組みました。初回の製作は桐木の製茶師梁駿徳(りょうしゅんとく)が担ったとされます。伝統的な正山小種は青楼と呼ばれる建物の中で松の薪の煙と熱で萎凋させますが、金駿眉では燻さず、烏龍茶のように日光萎凋(いちょう)を取り入れて、芽の甘い香りを引き出す方向に製法を組み替えました。芽だけで作った茶は水色が金色で甘く滑らかで、渋くて濃いという中国国内の紅茶の印象を覆すものになりました。

「駿眉」の名前は、細い芽が眉のように見えることと、「駿」が駿馬のように速く優れたさまを表すことから付いたと正山堂は説明します。初回製作者の梁駿徳の名前から取ったという説もあり、由来は一つに定まっていません。金駿眉と同じ年に正山堂は高級紅茶のブランドとして「正山堂」を立ち上げ、それまでの「元正(げんせい)」を中級のブランドに位置づけました。

金駿眉は2006年ごろから市場に出て、数年で中国紅茶の代名詞になりました。ただし「金駿眉」の商標は正山茶業と桐木の別の会社がそれぞれ2007年に出願して認められず、2013年には北京の裁判所が一般名称と判断したため、産地外でも芽だけの紅茶を金駿眉と名乗れるようになりました。桐木産を定義する業界標準の『金駿眉茶』(GH/T 1118-2015)が制定されたのはその後です。

駿眉製法と駿眉中国

正山堂は金駿眉のヒットの後、製法そのものを事業の核にしました。2010年ごろから各地の産地を調査し、河南の信陽毛尖(しんようもうせん)の産地で作る「信陽紅(しんようこう)」を皮切りに、浙江紹興の「会稽紅」、四川(しせん)の「蒙山紅」、貴州の「普安紅」、安徽黄山の「新安紅」、湖南(こなん)の「古丈紅」、湖北(こほく)の「巴東紅」、山東の「諸城紅茶」、雲南の「高黎瑞貢」など、駿眉系と呼ぶ紅茶を現地の会社と共同で開発しています。狙いは、桐木の芽だけでは量が限られる金駿眉の作り方を、各地の茶葉に合わせて再現し、桐木産よりずっと手の届く価格で「金駿眉風」の紅茶を作ることです。

たとえば2016年に始まった貴州普安との提携では、桐木の小葉種とは性格の違う雲南大葉種(うんなんだいようしゅ)系の茶葉に製法を合わせ、大葉種(だいようしゅ)らしい厚みを残しつつ金駿眉の清らかな甘さを出すことを目指したと説明されています。産地ごとに茶樹の品種や標高、気候が違うため、萎凋や発酵(はっこう)の加減を変えて、その土地の味と駿眉製法の性格を組み合わせる形になります。

こうした製法を文書にしたのが、正山堂が主導して起草し中国茶葉流通協会が2018年11月に発布した団体標準『駿眉紅茶』(T/CTMA 002-2018、2019年3月実施)です。起草には正山茶業のほか、貴州の普安紅、雲南の滇紅集団、河南の信陽祥雲、浙江の会稽紅といった提携先が加わっています。この標準は原料を芽だけに限らず、一芽二葉(いちがにょう)など葉を含むものも等級分けして駿眉紅茶に含めるので、桐木産の芽だけを定義する『金駿眉茶』の標準とは範囲が異なります。同じ2018年に、各産地の茶を一つの銘柄に束ねた「駿眉中国」というブランドが発売され、2023年時点で河南信陽から雲南鳳慶、海南、広西(こうせい)、チベットの林芝まで13の産地が含まれています。

標準対象位置づけ
GB/T 13738.3-2012 小種紅茶桐木を中心とする正山小種国家標準。起草に桐木の生産者が参加
GH/T 1118-2015 金駿眉茶武夷山自然保護区内の芽だけの紅茶業界標準。桐木産の金駿眉の定義
T/CTMA 002-2018 駿眉紅茶各地の茶葉で駿眉製法により作る紅茶団体標準。正山堂が主導し、産地を限定しない

見方

正山堂の物語には、地元の茶が売れない苦境から新しい紅茶を作った職人の話と、その製法を標準化して全国に広げた企業の話の両面があります。金駿眉の本物と模倣品の問題(桐木産に対して市場に出回る量が桁違いに多い)は、正山堂自身が製法を各地に持ち込んだことと切り離せません。一方で駿眉系の紅茶は、それまで輸出用の安い茶と見られていた中国の紅茶を国内で飲む習慣を作り、信陽や碧螺春(へきらしゅん)の産地など高級緑茶の土地で紅茶を作る流れを生んだ点で、21世紀の中国茶に大きな影響を与えています。

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参考リンク