中国茶辞典中国茶・台湾茶の用語とコラム

茶葉

白茶(はくちゃ)

読み はくちゃ拼音 báichá別名 微発酵茶、white tea、白毫銀針、白牡丹、貢眉、寿眉、老白茶、雲南白茶、月光白

発酵(酸化)度微発酵(萎凋中の弱い酸化のみ)
特徴的な工程萎凋

摘んだ葉を殺青(さっせい)も揉捻(じゅうねん)もせず、萎凋(いちょう)と乾燥だけで仕上げる茶です。国家標準の茶葉分類(GB/T 30766)は白茶を「萎凋・乾燥などの工程で作られた製品」と定義しており、六大茶類の中で最も工程が少ない茶類です。萎凋のあいだに葉の酵素がわずかに働くため「微発酵茶」と呼ばれます。芽や葉の産毛が白く見えることが名前の由来です。

四つの区分

国家標準の白茶(GB/T 22291)は、原料によって白茶を四つに分けています。

名前原料性格
白毫銀針(はくごうぎんしん)大白茶(だいはくちゃ)・水仙品種の芽のみ最上級。淡く甘い
白牡丹(はくぼたん)同じ品種の一芽一葉から一芽二葉芽と葉の両方の風味。白茶の中心的な商品
貢眉(こうび)在来の群体種(ぐんたいしゅ)の芽葉
寿眉(じゅび)成熟した葉が多い味がしっかりして、熟成向きとされる

福建省の福鼎(ふくてい)と政和(せいわ)が二大産地で、福鼎大白茶(ふくていだいはくちゃ)・福鼎大毫茶(ふくていだいごうちゃ)・政和大白茶(せいわだいはくちゃ)という品種が使われます。福鼎白茶は2008年に地理標志産品に指定され、製法は2011年に国家級無形文化遺産に登録されました。茶学の専門家は福鼎の太姥山(たいぼさん)を白茶の発祥地と考証しています。

萎凋がすべて

工程が萎凋と乾燥だけなので、萎凋の出来がそのまま品質になります。葉を竹の笊に薄く広げ、弱い日光と通気を調整しながら長時間かけて水分を抜きます。厚く重ねて乾きが遅れると紅茶のように褐変し、乾きすぎると刈りたての草のような青臭さが残ります。萎凋の途中で細胞膜が緩み、香りの前駆体が酵素と出会うことで、揉んでいないのに花のような香りが立ちます。

工程が単純な反面、原料の質がごまかせない茶でもあります。肥料を多く与えた葉や遅い時期の葉で作ると個性が弱く、はじめて飲む人には何を味わえばいいのか分からない茶になります。

淹れ方で変わる

白茶は加熱工程がないため酵素が生きており、淹れ方によって香りが変わります。水出しでは酵素が働かず鮮烈な香りに、沸騰した湯で短く洗茶すると酵素が止まって柑橘や花の香りに、低めの湯温でゆっくり淹れるとまた別の香りになります。揉んでいないので成分の出方はゆっくりで、緑茶より長めに置くのが一般的です。

老白茶(ろうはくちゃ)

白茶は年を経ると蜜や果実のような香りが出るとされ、数年から十年以上寝かせた老白茶が珍重されます。2010年代に福建でビンテージ白茶のブームが起こり、原料価格が上がりました。餅茶(へいちゃ)の形に緊圧した白茶も熟成向きとして流通しています。

白茶ブームの経緯

白茶が「セレブの美容茶」として語られるようになったのは、2000年代の欧米での健康・美容ブームがきっかけです。中国国内で白茶が高騰したのは、それとは別の2010年代の老白茶ブームで、火付け役も広まり方も違います。

欧米: 「緑茶より抗酸化」の美容茶(2000年代)

始まりは研究発表でした。2000年にオレゴン州立大学のライナス・ポーリング(らいなす・ぽーりんぐ)研究所が、白茶の抽出液が緑茶よりも強く DNA の変異を抑えたという実験結果をアメリカ化学会で発表し、「工程が少ないぶんカテキン(かてきん)が壊れずに残る」という説明とともに広く報道されました。2004年にはペース大学が、白茶エキスの抗菌作用が緑茶より強いという結果を発表しています。どちらも試験管や動物での結果で、研究者自身がヒトでの検証はこれからだと断っていましたが、「緑茶の次は白茶」という見出しが一人歩きしました。

これに化粧品業界が乗ります。2002年にエスティ・ローダー傘下のオリジンズが白毫銀針(はくごうぎんしん)を配合したスキンケア「A Perfect World」を出し、白茶は「皇帝の不老長寿の茶」というイメージで抗酸化化粧品の成分になりました。飲料でも2006年に Snapple が瓶入りのホワイトティーを大々的に発売するなど、ペットボトルやティーバッグの「ホワイトティー」がスーパーに並ぶようになります。日本の美容メディアが「ハリウッドセレブが愛飲」「抗酸化力は緑茶の3倍」と紹介するのは、このアメリカのブームの輸入です。ただし具体的に誰が飲んでいたかを示す資料はほとんどなく、実際の担い手は研究発表と化粧品・大手飲料メーカーでした。

中国: 老白茶と緊圧白茶(2010年代〜)

中国での白茶は、2000年代まで福建の一部でしか作られない輸出中心の地味な茶でした。それが投資の対象になったのは、2011年に上海の茶文化イベントのオークションで20年物の福鼎老白茶(375g)が18万8千元で落札されるなど、高値が相次いで報じられてからです。2013年には CCTV のドキュメンタリー『茶、一片樹葉的故事(ちゃ、いっぺんじゅようてきこじ)』が福鼎白茶を大きく取り上げ、全国に名前が知られました。

売り方の核になったのが「一年茶、三年薬、七年宝(いちねんちゃ、さんねんやく、しちねんほう)」というキャッチコピーです。萎凋と乾燥だけで酵素が残るので寝かせると味が乗る、という製法上の特徴を、プーアル茶で成功した「寝かせるほど価値が上がる」という物語に重ねました。2013年頃からは福鼎の茶業者が中秋節に「白茶月餅」と銘打った餅茶を売り出し、場所を取らず、まとめ買いさせやすく、売れ残っても「そのうち老茶になる」と言える緊圧白茶が急速に広まります。2015年には国家標準 GB/T 31751『緊圧白茶』が制定され、正式な商品区分になりました。

その結果、白茶の生産量は2012年の約1万トンから2015年には約2万トンへと、4年で倍増しています。一方で、揉捻や高温乾燥で人工的に古く見せた「作旧(さくきゅう)」の老白茶や年数を偽った茶が出回り、業界メディアが市場の混乱を報じるまでになりました。

2022年冬には SNS で「囲炉煮茶(いろしゃちゃ)」(炭火の炉で茶を煮ながら焼き菓子や果物を楽しむスタイル)が若い世代に流行し、老白茶に陳皮(ちんぴ)を加えて煮るのが定番になりました。2024年の福鼎市は茶産業の総合産値が150億元を超え、地域ブランド価値の全国ランキングで上位に入るまでになっています。

雲南の白茶

雲南省でも大葉種(だいようしゅ)の芽葉を萎凋した白茶(月光白(げっこうはく)など)が作られ、以前は福建の名前を借りて流通していました。2021年に雲南省の団体標準が「雲白毫(うんはくごう)」「月光白」「雲寿(うんじゅ)」という独自の区分を定め、福建の白茶と区別されるようになりました。

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