味・香り
- 回甘かいかん — 口に含んだときは苦渋くても、飲み込んだあとに口の中へじわりと甘みが戻ってくる感覚を表す評価語。国家標準の審査用語では苦みが甘みに転じる「苦能回甘」とともに定義され、生津・喉韻とそろうと質の高い茶とされる。
- 掛杯香かいはいこう — 茶を飲み干したあとの杯の内側や蓋碗の蓋の裏に残る香りで、鳳凰単叢や岩茶など烏龍茶の評価によく使う語。茶湯の香りとは別に評価し、冷めてからも甘い香りが残る冷香の長さが上質な茶の目印とされる。
- 花香・果香・火香かこう・かこう・かこう — 茶の香りを生まれ方で大まかに分ける基本の言葉で、花香は做青や萎凋、果香は深い酸化や熟成、火香は焙煎や炒りで生まれる。産地や製法ごとに典型の型があり、香りを知ると茶の作り方の見当がつく。
- 岩韻がんいん — 武夷岩茶に特有とされる風味と余韻で、岩の骨格と花の香りを意味する岩骨花香とも言う。国家標準が武夷岩茶の定義に含める言葉で、ミネラル感のある厚み、焙煎の奥から立つ花の香り、喉に残る余韻をまとめて指す。正岩の茶ほど強いとされる。
- 観音韻かんのんいん — 安渓鉄観音に固有とされる、蘭のような香りと飲み込んだあとに喉や口に残る余韻をまとめて表す評価語。品種・産地・製法の三つの香りが重なって生まれるとされ、国家標準の鉄観音の品質要求にも音韻の語が入る。
- 喉韻こういん — 茶を飲み込んだあとに喉のあたりへ残る爽快さや甘さ、潤いといった心地よい感覚と余韻を表す評価語。甘みに絞った回甘と違い、香りや厚みも含めた喉の余韻全体を問う言葉で、産地ごとの岩韻や観音韻もこの派生。
- 山韻さんいん — 茶の味と余韻に現れる産地の土地の性格を表す評価語で、鳳凰単叢と台湾の高山茶で使う。香りではなく飲み込んだあとに残る厚みや甘さ、余韻の長さを指し、標高の高い茶園の茶に出るとされて値段の差を説明する。
- 樟香・参香しょうこう・さんこう — 熟成した普洱茶の陳香を細かく言い分ける愛好家の語彙で、国家標準の審査用語に定義はない。樟香はクスノキを思わせる木の香りで古い生茶に、参香は朝鮮人参のような薬の香りで老熟茶に出るとされる。カビ臭や湿った匂いは陳香ではなく保存の失敗。
- 条索じょうさく — 乾いた茶葉の形を表す官能審査の用語で、揉捻でよじれた棒状の茶葉を指し、外形の評価に使う。締まりやそろい、艶を見るほか、条索状・球状・扁形など製法で決まる形の呼び分けにも使う。外形は見た目の評価で、味や余韻とは別。
- 審評しんぴょう — 茶の品質を外形・湯色・香気・滋味・葉底の五因子で採点する官能審査で、中国では国家標準が方法と器具を定める。産地の品評会や等級の判定、取引の検品に使われ、日常より濃く長く淹れるのは欠点を見つけやすくするため。
- 水色すいしょく — 淹れた茶の液の色で、中国語では湯色と言い、外形や香気と並ぶ官能審査の五因子のひとつ。色の系統は酸化の程度で決まり、緑茶の黄緑から紅茶の紅まで茶類ごとの基準色がある。系統より、澄んで明るいかどうかが品質の目印として重視される。
- 清香型と濃香型せいこうがたとのうこうがた — 烏龍茶を焙煎と酸化の軽重で分ける呼び方で、安渓鉄観音の国家標準が定めた区分がいまは烏龍茶全般で使われる。清香型は酸化を浅く焙煎を軽くして緑の葉色と花の香りを残した現代的な型、濃香型は焙煎を重ねて甘さと厚みを出した伝統に近い型。
- 生津せいしん — 茶を飲んだあとに口の中が潤い、両頬や舌の下から唾液が湧いてくる感覚を表す評価語。ほぼ常に回甘とセットで「回甘生津」と言われ、普洱生茶や岩茶のように飲んだあとの変化を楽しむ茶で品質の条件になる。
- 青味・焦味せいみ・しょうみ — 茶の欠点を表す言葉で、青味は殺青や做青が足りず青臭さが残った状態、焦味は釜温や焙煎が強すぎて焦げた状態。国家標準の審査は欠点を見つけて減点する方式で、煙味や酸味、水味、カビ臭も含め、香りから製茶や保存のどこで失敗したかが分かる。
- 倉味そうみ — 普洱茶や黒茶を倉庫で熟成させたときに茶に付く、湿った倉庫やカビ、土を思わせる匂い。高温多湿の湿倉で速く熟成させた茶に出やすく、乾倉の茶にはほとんどない。軽い倉味は風に当てる退倉で抜けるが、強いカビ臭は保存の失敗で欠点になる。
- 耐泡たいほう — 煎を重ねても味と香りが続くことで、日本語の煎持ちに当たり、何煎目まで飲めるかで表す評価語。揉捻の強さ、葉の成熟度、形や焙煎、淹れ方で決まり、普洱茶や烏龍茶で重視されるが、煎数が多いほど良い茶というわけではない。
- 茶気ちゃき — 茶を飲んだときに味や香りではなく体に現れる感覚で、体が温まる、汗ばむ、気分が高揚するなどの変化を言う。普洱生茶や岩茶の力強さを表す言葉として愛好家が使うが、国家標準の審査用語にはなく個人差が大きい。
- 陳香ちんこう — よい茶を適切に保存して年を経たときに生まれる、雑味やカビ臭のない好ましい熟成の香り。普洱茶や黒茶、老白茶の評価に使い、棗香や樟香などと呼び分ける。保存の失敗で付く倉味とは区別され、5年以上置いた鉄観音は陳香型と区分される。
- 湯感・厚みとうかん・あつみ — 茶を口に含んだときの液の質感を表す言葉で、厚みやとろみ、滑らかさといった口当たりと重さの感覚。味の種類ではなく、ワインのボディや日本語のコクに近い。香りと違って原料の力で決まるため、産地と樹齢の差が表れる。
- 発酵度はっこうど — 茶葉の酸化がどの程度進んだかを、緑茶を0、紅茶を100とする百分率などで表す言い方。測定値ではなく葉の色や水色から見当を付けた目安で、烏龍茶どうしを比べるには役立つが、六大茶類を一本の物差しに載せる説明には無理がある。
- 蜜香みつこう — 蜂蜜を思わせる甘い香りで、茶の香りを表す言葉の中でも最もよく使われるもののひとつ。台湾の東方美人では、ウンカに汁を吸われた芽葉の防御反応から生まれる香りを指し、品種や焙煎による蜜のような甘さにも使う。
- 葉底ようてい — 淹れたあとに残った茶葉のことで、日本語の茶殻に当たり、外形や水色と並ぶ官能審査の五因子のひとつ。色、柔らかさ、そろい、酸化の入り方から製法や摘採時期が読め、飲んだ印象の答え合わせになる。烏龍茶なら縁の赤い緑葉紅鑲辺が良い仕上がりの目印。