茶器
- 蓋置がいち — 茶壺や蓋碗、湯沸かしの蓋を外したときに置いておくための小さな台で、蓋の内側の雫で卓を濡らさず、蓋を清潔に保つ。日本の茶道の道具から名前と形を借りて台湾の乾泡に入り、鉄壺の流行とともに大陸にも広まった。必ず要る道具ではない。
- 蓋碗がいわん — 蓋、碗、托の三つでひと組になった茶器で、茶葉を入れて湯を注ぎ、蓋をずらして葉を押さえながら注ぎ出す。湯のみにも急須の代わりにも使え、口が広く葉の開きや水色、蓋の香りを確かめやすいので、産地で茶を評価するときの器でもある。
- 工夫茶四宝くふうちゃしほう — 広東省潮州と福建南部の工夫茶に欠かせない四つの道具で、炉・湯沸かし・小さな茶壺・白磁の小杯からなる。清代に整った道具立てで、小壺で濃く淹れて熱いうちに飲む工夫茶の骨格を今も支える。
- 壺承こしょう — 茶壺や蓋碗を載せる小さな皿や台で、壺の底の雫や注ぐときにこぼれた湯を受けて卓を濡らさない道具。潮州工夫茶の深い茶船が、湯をかけない台湾の乾泡に合わせて浅く小さくなったもので、茶盤を使わない茶席の中心になる。
- 紫砂壺しさこ — 江蘇省宜興で採れる陶土の紫砂で作る釉薬をかけない茶壺で、明代から続く茶壺の名産品。微細な気孔が香りや成分を吸って渋みを丸くするため、岩茶や普洱茶など厚みを楽しむ茶に向き、一壺一茶で使い込むほど艶が出る。製作技術は国家級無形文化遺産。
- 煮水器(随手泡・電陶炉・鉄壺・銀壺)しゃすいき — 茶を淹れる湯を沸かす道具の総称で、卓上の電気ケトル、炉に載せる壺、炭の炉と砂銚に大別される。最も普及しているのは随手泡と呼ぶ小型の電気ケトルで、鉄壺や銀壺は湯の口当たりを楽しむ道具。潮州工夫茶では紅泥の炉と砂銚が工夫茶四宝の二つを占める。
- 主人杯しゅじんはい — 茶席の主人が自分専用に使う品茗杯で、客に出す揃いの白磁の杯とは別に材質や形にこだわった一客。使い込むほど変わる建盞や紫砂、柴焼など来歴を語れる杯が好まれる。古い工夫茶にはなく、2010年代に中国大陸で茶器の趣味が広がるなかで定着した習慣。
- 水盂(建水・渣方)すいう(けんすい・さほう) — 温杯や洗茶の湯、飲み残しの茶を捨てるための器で、乾泡では茶盤の代わりに卓の脇に置く。水盂、渣方、水方など呼び名が多く、日本の茶道のこぼしにならって建水とも呼ぶ。客の正面には置かないのが作法。
- 茶荷ちゃか — 乾いた茶葉を載せて客に見せ、そのまま蓋碗や茶壺の口へ流し込むための、片側が注ぎ口状に絞られた小さな皿。淹れる前に葉の姿と乾いた香りを客に確かめてもらう賞茶に使う。台湾の茶芸で整えられた道具で、名は蓮の葉に似た形から。
- 茶海ちゃかい — 蓋碗や茶壺から注ぎ出した茶をいったん受けて濃さを均一にし、茶杯に注ぎ分けるための片口の器。公道杯や茶盅とも呼ぶ。台湾の茶芸で考案されて大陸に広まった新しい道具で、潮州の伝統的な工夫茶にはない。
- 茶巾ちゃきん — 茶壺や茶海の底に付いた水滴を取り、注ぎ口の垂れや卓にこぼれた茶を拭くための、手元に置く小さな布。茶器だけに使い、麻や綿の吸水性のよい生地で茶渋が目立たない深い色が好まれる。乾泡では畳んで卓に敷き壺承の代わりにもする。
- 茶漉し(茶濾・茶漏)ちゃこし(ちゃろ・ちゃろう) — 蓋碗や茶壺から茶海に注ぐときに茶海の口に載せて、細かい葉や粉を受ける外付けの小さな網。粉の出やすい崩した緊圧茶や細かい紅茶で使い、大きく開く烏龍茶なら蓋で押さえるだけで足りる。茶漏は本来、茶壺に葉を入れる漏斗の名。
- 茶則ちゃそく — 茶葉を茶缶から取り出して量り、蓋碗や茶壺に移すための細長いさじで、竹や木を樋状に削ったものが多い。則は量の基準の意味で、陸羽の茶経の茶則にさかのぼる。茶匙や茶針などとあわせて茶道六君子と呼ぶ台湾式の道具立てがある。
- 茶寵ちゃちょう — 茶盤の上に置き、茶を淹れるたびに余った茶や洗茶の湯をかけて育てる小さな焼き物の置物。紫砂など釉薬をかけない土で作られ、茶を浴び続けると壺と同じように艶が出る。縁起物の姿が多く、湯をかけると水を吹く仕掛けのものもある。
- 茶刀・茶針ちゃとう・ちゃしん — 餅茶や磚茶など固めた茶を崩すための道具で、平たい刃の茶刀と細い錐状の茶針があり、葉の層の隙間に差し込んでこじ開ける。切るのではなく層に沿って剥がすように使い、葉を砕かないのがこつ。茶道六君子の竹の茶針とは別の道具。
- 茶盤ちゃばん — 茶壺や蓋碗を載せて茶を淹れるための盤で、洗茶の湯や壺にかけた湯を落とす排水口や受け皿が付く。竹や木、石、陶器などで作られ、潮州の茶船を台湾以降に大きく発展させた道具。湯をかけない乾泡では小さな壺承や茶巾で代えることが多い。
- 茶葉罐(茶缶・茶倉)ちゃようかん(ちゃかん・ちゃそう) — 茶葉を保存するための容器で、茶葉を傷める光、湿気、空気、臭いの四つを遮るのが役目。錫や磁器、紫砂などで作られ、飲み切るまでの短期保存と普洱茶や白茶を年単位で寝かせる保存では求めるものが違い、後者は茶倉とも呼ぶ。
- 潮州朱泥手拉壺ちょうしゅうしゅでいしゅらこ — 広東省潮州市の楓渓で作られる、轆轤で土を引き上げる手拉坯で成形した朱泥の小さな茶壺。潮州工夫茶の定番の器で、胎が薄く軽く掌に収まる小ささが特徴。薄いので湯を高温に保て、鳳凰単叢を淹れる器として見直されている。
- 杯托(茶托・盞托)はいたく(ちゃたく・さんたく) — 茶杯を載せる小さな受け皿で、熱い杯を持ちやすくし、客に出すときに杯へ直接触れずに済む茶道具。伝承では唐代の考案とされるが、出土品はそれより古く、宋代には茶盞と対の道具として定着した。蓋碗の受け皿も同じ系統。
- 玻璃杯はりはい — 茶葉を入れて湯を注ぎ、そのまま口をつけて飲むための背の高い耐熱ガラスのコップで、中国の茶館や家庭で最も日常的な器。葉が開いて沈む姿を眺められるので緑茶や黄茶、白毫銀針に向き、注ぎ出さず湯を足しながら飲む留根が定番。
- 品茗杯(茶杯)ひんめいはい — 中国茶を飲むための小さな杯で、量を飲むためではなく味と香りを確かめる器なので、ひと口から三口で飲み切れる大きさ。内側が白く口が薄いものが基本で、口の開き方や深さで香りの出方が変わり、圧手杯や鶏缸杯など形や由来にちなんだ名前が付く。
- 聞香杯もんこうはい — 香りを嗅ぐためだけに使う細長い杯で、1970年代以降の台湾の茶芸で考案された道具。茶を注いで飲杯に移し、空になった杯の内側に残る香りを冷めるまで追う。香りの立つ清香型の台湾烏龍茶で使われ、潮州の伝統的な工夫茶にはない。
- 養壺ようこ — 釉薬をかけない紫砂壺を使い込み、土の気孔に茶の成分をしみ込ませて壺を育てる、愛好家の作法。渋みが和らぎ艶が出る。一つの壺に一種類の茶だけを使い、洗剤を使わず湯で洗って乾かすのが基本で、使い始めの下ごしらえは開壺と呼ぶ。