四川省
読み しせんしょう現地音 スーチョワン拼音 Sìchuān別名 四川、川、蜀、成都、雅安、蒙頂山、Sichuan
中国南西部の省で、省都は成都です。省の大半が海抜1000メートル以上の山地や高原で、東部の四川盆地は豊かな水と土に恵まれた穀倉地帯として「天府之国」と呼ばれてきました。東は亜熱帯、西の高原は標高によって亜寒帯までの気候帯が重なります。四大茶区では西南茶区に属します。
茶栽培の発祥の地
四川は人が茶を栽培した最古の地とされます。雅安市の蒙頂山には、前漢の時代に呉理真という人物が茶樹を植えたという伝承があり、史料上も唐の天宝年間(742年〜)から蒙頂山の茶が貢茶に定められ、中国で最も長く貢茶であり続けた産地です。四川では茶は他地域から入ってきたのではなく、この地にあった野生の茶樹を栽培したのが始まりだと考えられています。
主な茶
| 茶 | 産地 | 内容 |
|---|---|---|
| 蒙頂甘露 | 雅安市名山区雅安 | 若い芽を巻いた緑茶。碧螺春に似た姿。蒙頂山茶の看板 |
| 蒙頂黄芽 | 同上 | 芽だけの黄茶。炒りと悶黄を交互に行う製法で希少 |
| 雅安蔵茶(南路辺茶) | 雅安市 | チベット向けに作られてきた黒茶。康磚茶、金尖茶など |
| 竹葉青 | 楽山市峨眉山 | 竹の葉のようにまっすぐな緑茶 |
| 碧潭飄雪 | 峨眉山周辺 | 仕上げに花を戻すジャスミン茶。四川はジャスミン茶の一大消費地 |
雅安市の茶園面積は約100万畝(約6.7万ヘクタール)、生産量は年12万トン近くで、蒙頂山茶の緑茶と雅安蔵茶の黒茶が二本柱です。
蔵茶と茶馬古道
雅安は四川からチベットへ向かう茶馬古道の起点で、明代から辺境向けの茶を作ってきました。蔵茶はチベットで野菜不足を補う日常の飲み物として煮出してバターと塩を加えて飲まれ、いまも少数民族政策上の重要な物資として扱われています。製法は2008年に国家級無形文化遺産に登録されており、渥堆の技術は国家機密に当たるとして工場の見学は原則できません。1546年創業とされる雅安茶廠には蔵茶の博物館が併設されています。
成都の茶館
成都は中国で最も茶館の多い街と言われ、公園や寺院の中の露天の茶館で、蓋碗を手に一日のんびり過ごす文化があります。今日中国全土で使われている蓋碗は唐代に成都で生まれたという説があり、成都の茶館では蓋のずらし方が店員への合図になります。成都で飲まれるのは緑茶と緑茶ベースのジャスミン茶が中心で、蒙頂甘露、蒙頂黄芽、竹葉青、青城雪芽などの地元の茶が並びます。四川料理は花椒のしびれる辛さで知られ、九寨溝、峨眉山、楽山大仏、パンダの保護区など世界遺産も多い省です。
下位の産地
この産地の茶葉
- 碧潭飄雪四川省の茉莉花茶で、緑の茶湯に乾燥した白い花が雪のように浮かぶ姿を成都の茶館で楽しむ茶。明前の芽茶にジャスミンだけで香りを付け、仕上げに乾燥した花を戻すのが特徴で、1980年代に創製された新しい茶。
- 蒙頂甘露四川省雅安市の蒙頂山で作られる炒青緑茶で、若い芽を揉んでよじり産毛を立たせた細い姿に仕上げる。名前の通り甘くうまみが厚く渋みは穏やか。中国で最も早く茶が栽培された地のひとつと伝えられ、新茶の出回りも早い。
- 蒙頂黄芽四川省雅安市の蒙頂山で作られる芽だけの黄茶で、釜炒りと紙包みの悶黄を交互に繰り返す三炒三悶で仕上げる。乾いた葉も水色も黄色く渋みの少ない丸い味で、芽しか使わず手間もかかるため作り手が減っている。
- 蔵茶四川省雅安で作られ、チベットへ運ばれてきた黒茶で、成熟した葉と茎を渥堆で発酵させレンガ状に固める。古くからの茶馬交易の主役で南路辺茶とも呼ばれ、チベットではバター茶の原料として日常の必需品。渋みがなく甘い。
- 竹葉青四川省峨眉山の炒青緑茶で、芽だけを摘んで平たく細く整え、両端の尖った姿が竹の葉に似る。伝承では1960年代に副総理が名付けたとされる新しい銘柄で、名前が一社の商標のため同型の茶は別名でも売られる。
参考リンク
- 方志四川(澎湃 政务号): 千秋蒙顶 茶香天下——蒙顶山茶 — 蒙頂山茶の歴史と地理標志
- 四川农网: 蒙顶山茶入围2024中国茶区域公用品牌价值十强 — 雅安の茶園面積と生産量、蒙頂山茶と雅安蔵茶の位置づけ
- 中国非物质文化遗产网: 黑茶制作技艺(南路边茶制作技艺) — 雅安蔵茶(南路辺茶)の製法(2008年国家級無形文化遺産)
- 人民网四川: 雅安南路边茶与它背后的民俗文化 — 蔵茶の別名と歴史、茶馬古道の起点