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鳳凰単叢を選ぶときの六つの軸。山場・樹齢・香型・焙煎・季節・等級

茶樹の枝、細長い茶葉と、淡い山の稜線を描いた挿絵

鳳凰単叢(ほうおうたんそう)の商品名は長いです。「老叢 蜜蘭香 庵角 中火 2025春」「古樹 宋種 黄枝香 烏崠 李仔坪 足火 2024春」。初めて見ると暗号ですが、これは産地の人が茶を語るときの軸がそのまま並んでいるだけで、分解すれば読めます。軸は六つあります。どこで育った木か(山場)、どれくらいの樹齢か、どの香りの型か、どれくらい火を入れたか、いつ摘んだか、そして選別のどの段階の茶か。この順に見ていきます。

1. 山場: どの村の、どの高さの木か

鳳凰単叢は山場(さんじょう)、つまり茶樹が育った場所で値段が決まる茶です。商品名の烏崠(うとう)、大庵(だいあん)、甜竹坑(てんちくこう)、庵角(あんかく)、青麻園(せいまえん)、坪坑頭(へいこうとう)といった語は鳳凰山(ほうおうざん)の村や地区の名前で、産地の人はこれを見て標高と土地の性格を思い浮かべます。

鳳凰鎮の地図。中央の鳳凰鎮の北西に烏崠山と烏崠村、西に最高峰の鳳鳥髻、東に大質山があり、標高帯を四段階で塗り分けている

鳳凰鎮(広東省潮州市潮安区)の地形と主な村。標高は NASA の SRTM、地名・道路・水面は OpenStreetMap のデータから作図した。産地で言う低山・中山・高山は、おおまかにこの図の400メートル未満、400〜700メートル、700メートル以上の帯に当たる。商品名に出る山場のうち、位置と標高の資料があるものを表にまとめる。

商品名で見る山場場所標高の目安
烏崠(烏崠村)烏崠山の東側斜面。李仔坪・獅頭脚・桂竹湖・下寮など7つの自然村の総称で、鎮の中心から北西へ約7キロ1100メートル前後以上
大庵烏崠山。樹齢600年余りとされる大庵宋種の木がある950メートル前後
坪坑頭烏崠山の山腹。鴨屎香の原木がある1000メートル前後
青麻園福南村に属し、鎮の中心から北西へ約10キロ。鳳凰で最初に霜が降りるといわれる冷涼な高地高山(数値の資料なし)
庵角鳳渓村。蜜蘭香で知られる650メートル前後
大質山鎮の東、石古坪村・棋盤村の奥。明代に貢茶「待詔茶」を出した待詔山とされる山頂1143メートル
福北・鳳渓鎮の北、鳳渓水庫の周辺。研究では低山・中山の試料地300〜700メートル

なお、地理標志産品としての「鳳凰単叢茶」の保護範囲は潮安区・饒平県・湘橋区の30の鎮に及び、鳳凰鎮の外で作られた茶も制度上は鳳凰単叢と名乗れます。産地の人が山場として語るのは、この地図に入る鳳凰鎮の山々です。

大きくは低山(麓)、中山(山腹)、高山(おおむね標高600〜800メートル以上)に分けられ、高くなるほど味が濃く澄み、喉に戻る甘さと余韻が長くなり、値段も上がります。低山の茶は香りの立ち上がりが早くすっきりしていて、これはこれで日常には向きます。広東省の研究者が鳳凰鎮の茶園を標高別に分析した研究でも、高山と中山の茶は成分の量と香気の構成が低山と明らかに違うことが示されています。

ただし、有名な山場の名前は値段に乗ります。烏崠山の茶は日本でもよく見ますが、その中でも烏崠村(うとうそん)の茶はさらに高く、名前が先に立って中身が伴わないものもあります。山場を確かめる一番の方法は、同じ香型、同じくらいの樹齢、同じ茶師、同じ火入れで低山・中山・高山を並べて飲むことです。

2. 樹齢: 単叢・老叢・古樹・単株・母樹

「単叢」はもともと一株ごとに製茶する意味でしたが、いまは鳳凰山の烏龍茶全体の呼び名になっていて、若い茶園の茶も単叢です。そこで樹齢を示す語が頭に付きます。老叢(ろうそう)(老欉)は樹齢の高い木、古樹(こじゅ)はさらに古い木、単株(たんかぶ)は一本の木だけから作った茶、母樹(ぼじゅ)はその香型の系統の元になった原木です。何年から老叢かに決まりはなく、産地の売り手は樹齢を「推定80年」のように添えることが多いです。詳しくは単株・老欉(たんかぶ・ろうそう)にまとめています。

樹齢が高いほど味の厚みと余韻(産地で山韻(さんいん)と呼ぶもの)が深いとされ、値段も上がります。ただし高山の老叢でも出来はまちまちで、名前だけで買うと「よく分からなかった」という経験になりがちです。母樹の茶も同じで、希少ではあっても美味しいとは限りません。

3. 香型: 何の香りに似ているか

鳳凰単叢は清香型と濃香型(せいこうがたとのうこうがた)、つまり香りの型で名前を付けます。蜜蘭香(みつらんこう)(蜜と蘭)、鴨屎香(おうしこう)(アヒルの糞という名の花の香り。2014年に銀花香(ぎんかこう)と改名)、芝蘭香(しらんこう)、黄枝香(こうしこう)、杏仁香(きょうにんこう)、夜来香(やらいこう)、桂花香(けいかこう)、姜花香(きょうかこう)が有名で、ほかに八仙(はっせん)、大烏葉(だいうよう)、宋種(そうしゅ)、東方紅(とうほうこう)、通天香(つうてんこう)など数十の名前が市場にあります。

香型の名前は香りの手がかりですが、名前どおりに香るとは限りません。肉桂香に肉桂(シナモン)の香りを感じない、という経験は珍しくなく、産地の人でもブラインドで香型を当てるのは難しいです。名前は品種の系統を示す記号、と割り切って、まず蜜蘭香か鴨屎香で自分の基準を作り、そこから広げるのが現実的です。命名の由来は地名、樹形、葉の形、伝説とさまざまで、同じ木に複数の名前があることもあります。

4. 焙煎: 軽火から足火まで

鳳凰単叢は仕上げに炭火か電気で焙火(ばいか)をかけます。潮州では火の入り方を軽火(けいか)、中軽火(ちゅうけいか)、中火、中足火(ちゅうそくか)、足火(そくか)と呼び分け、炭焙煎の回数(一回、二回、三回以上)で語ることも多いです。日本で清香型・濃香型と呼ぶ区分は、この軽火と足火にほぼ対応します。

火の強さ香りと味保存の目安
軽火(炭焙煎一回)花や果実の香りが鋭く立つ。透明感水分が残るので一年以内に飲み切るのが目安
中火(二回)香りと甘みのバランス。多くの店の主力一年以上置ける
足火(三回以上)乾燥果実やカラメルのような香り、厚い甘さ。香りの瞬発力は減り余韻が増す数年置ける。潮州では一年以上寝かせて飲む人が多い

香りで選ぶなら軽火、積んでおいて飲むなら足火、と覚えておくと失敗が減ります。焙煎の直後は火の香りが立つので、数週間から数か月置いて落ち着かせてから売るのが普通です。同じ茶が春に軽火で出て、秋に再焙煎されて足火で出ることもあります。産地には「茶が君、火は臣」という言い方があり、焙煎の痕跡を残さず茶の香りを立たせるのが上手な火入れとされます。

5. 季節: 春茶・雪片・茶虎

主力は春茶で、3月末から5月にかけて低山から高山へ、蜜蘭香から八仙へと順に摘まれます。秋の終わりから初冬に摘む冬茶が雪片(せっぺん)で、一年で最も香りが高く立ち、渋みが少なく、春茶より手ごろです。雪片と春茶の間に早春の茶虎があります。商品名の「2025春」「2025冬」はこの季節を示します。

高山の老叢は年に一度、春しか摘まないので、雪片や茶虎は主に低山・中山の若い茶園の茶です。「高山の雪片」は例外的な存在で、あれば試す価値はあります。

6. 等級: 製品・二米・茶頭

最後に、選別のどの段階の茶かです。焙煎を終えた茶は機械と人の手で選別され、大きな葉や茎、割れた葉が外されます。製品にならなかった茶にも名前があり、大きな葉が主体のものを二米、茎の多いものを茶頭と呼びます。潮州の食堂で手づかみで蓋碗に放り込まれるのはこの茶頭です。詳しくは茶頭・二米(ちゃとう・にべい)にまとめました。

製品の値段の何分の一かで、同じ木の同じ香型の性格を知ることができるので、高い単叢を試す前の下見にも、量を使う冷茶にも向きます。

名前を読んでみる

冒頭の「古樹 宋種 黄枝香 烏崠 李仔坪 足火 2024春」を分解すると、古い木(樹齢)、宋種の系統で黄枝香の型(香型)、烏崠山の李仔坪という高山の集落(山場)、炭焙煎を重ねた足火(焙煎)、2024年の春茶(季節)、製品(等級)、と読めます。「老叢 蜜蘭香 茶頭 庵角 2026春」なら、老叢の蜜蘭香で庵角の茶の、茎の多い選別茶、です。

六つの軸のうち、値段に最も効くのは山場と樹齢、味の印象に最も効くのは焙煎と香型、日常で気軽に飲むかどうかを決めるのは季節と等級、と考えると整理しやすいです。そして最後は淹れ方です。鳳凰単叢は多めの茶葉、沸騰した湯、小さな器、短い抽出という骨格を守れば応えてくれる茶で、これを外してから軸を悩んでも判断がつきません。淹れ方は鳳凰単叢(ほうおうたんそう)と工夫茶(こうふちゃ)にまとめています。

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