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台湾高山茶(たいわんこうざんちゃ)

読み たいわんこうざんちゃ現地音 タイワンガオシャンチャ拼音 Táiwān gāoshānchá中国語 臺灣高山茶別名 高山茶、高山烏龍茶、高山烏龍、台灣高山茶、臺灣高山茶、台湾高山烏龍茶、高山烏龍、清香型球形烏龍茶、高冷茶、Taiwan High Mountain Oolong、High Mountain Tea、Gaoshan Cha、Gaoshan Oolong

分類青茶(烏龍茶) / 台湾烏龍
産地台湾
品種青心烏龍(せいしんうーろん)、金萱(きんせん)
製法萎凋(いちょう) → 做青(さくせい) → 殺青(さっせい) → 揉捻(じゅうねん) → 包揉(ほうじゅう) → 焙火(ばいか)
外観固く締まった半球状から球状で、鮮やかな深緑に艶がある。茎付きのまま巻かれ、湯の中で一芯二〜三葉に開く
水色蜜緑から蜜黄で澄み、明るい
香り清らかな花の香りが主で、標高が上がるほど涼しさを感じる香りになる。金萱はミルクのような香り
味甘く滑らかで渋みが少なく、厚みと活性がある。飲み込んだあとに喉から戻る甘さと余韻が長く、煎が続く

台湾(たいわん)で標高1000メートル以上の茶園の葉から作る烏龍茶の総称です。梨山茶(りざんちゃ)、大禹嶺(だいうれい)、阿里山高山茶(ありさんこうざんちゃ)、杉林渓(さんりんけい)など山ごとの銘柄はいずれもこの高山茶の一員で、台湾の茶改場(ちゃかいじょう)(農業部茶及飲料作物改良場)の分類では、酸化を軽くとどめて球状に仕上げる「清香型(せいこうがた)球形烏龍茶」のうち、海抜1000メートル以上の茶園で採れたものを高山烏龍茶と呼びます。産地の名前ではなく、平地茶に対する言葉です。茶改場の推計では、この線より上にある茶園はおよそ6千ヘクタールで、2022年の台湾の茶園面積1万2千ヘクタール余りの半分を超えます。鹿谷の凍頂烏龍で確立した球状烏龍茶の作り方を、そのまま高地に持ち上げたものが高山茶だと言えます。

高山茶の線引き

1000メートルという線は茶改場が示している公式の目安で、台湾の農業部の資料はどれもこの数字を使います。ただし市場では線引きが緩く、阿里山や梅山の茶園は900メートル前後から始まるものも「阿里山高山茶」として売られますし、逆に商品名に「特高山」「頂級高山」のような区分を付けて1600メートルや2000メートルで切る店もあります。後者は業界の慣習で、公的な定義ではありません。

「高山茶」と「高山烏龍茶」は日常では同じ意味で使われますが、厳密には高山茶は標高だけを言う言葉で、高山の葉から包種茶や紅茶を作っても高山茶に含まれます。この記事で扱うのは、実際にほとんどを占める青心烏龍(せいしんうーろん)主体の清香型の球形烏龍茶です。

主な産地と標高の目安

台湾の高山茶区は中央山脈の西側、南投県・嘉義県・台中市に集中し、桃園の拉拉山(ららさん)と花蓮側の大禹嶺がそれに加わります。産地名は行政区より茶区や集落の名で呼ばれ、同じ「梨山茶」でも福寿山(ふくじゅさん)、華崗(かこう)、翠峰(すいほう)、武陵(ぶりょう)のように集落名が商品名に付きます。

茶区行政区標高の目安性格
梨山茶(りざんちゃ)台中市和平区(福寿山・華崗・翠峰・武陵など)1700〜2600m台湾で最も高い茶区。甘みが厚く、冷たい山の水のような清涼感
大禹嶺(だいうれい)南投・台中・花蓮の境(台14甲線沿い)2100〜2600m梨山茶区の一部。2015年に主要な茶園が伐採され、本物は少ない
杉林渓(さんりんけい)南投(なんとう)竹山鎮1500〜1900m杉の森を思わせる清涼感と透明感
阿里山高山茶(ありさんこうざんちゃ)阿里山(ありさん)(嘉義県梅山郷・竹崎郷・番路郷・阿里山郷)1000〜1500m三大茶区で生産量が最も多く、花の香りが華やかで親しみやすい
玉山(ぎょくざん)茶南投県信義郷(しんぎきょう)・水里郷(すいりきょう)1000m台1980年代に開かれた新興茶区。玉山高山茶、塔塔加(たたか)茶などの名で売られる
合歓山(ごうかんざん)・霧社(むしゃ)・清境(せいきょう)南投県仁愛郷(じんあいきょう)1600m前後から茶園が散在し産地名が多い。「合歓山高冷茶」の産地証明標章がある
拉拉山桃園市復興区1500〜1600m北部で最も新しい高山茶区。産地証明標章がある

三大茶区(梨山・阿里山・杉林渓)の性格を並べると、標高が上がるほど香りは華やかさから涼しさへ、味は軽やかさから厚みへ寄っていく、というのが大まかな傾向です。ただし同じ山でも茶園の向きと標高、作り手で差が大きく、山の名前だけで味は決まりません。山ごとの詳しい話は各ページに任せます。

品種

台湾の茶樹の6〜7割は青心烏龍(せいしんうーろん)で、高山茶はほぼこの品種で作られます。青心烏龍は樹勢が弱く病害に弱い難しい品種ですが、清香型に仕上げたときの清らかな花の香りと甘みが他の品種で代えがたいため、標高の高い茶園ほど青心烏龍一辺倒になります。次に多いのが茶改場が育成した金萱(きんせん)(台茶12号)で、阿里山や仁愛郷では「阿里山金萱」「高山金萱」としてミルクのような香りを楽しみます。金萱のミルク香は標高の低い茶園のほうがはっきり出て、高山では上品になる代わりに弱まる、と言われます(金萱茶(きんせんちゃ))。翠玉(すいぎょく)や四季春(しきしゅん)も台湾の主要品種ですが、低地の四季春(しきしゅん)のように収量重視の産地が中心で、高山茶ではあまり見ません。

製法

日光萎凋(にっこういちょう)、室内萎凋と攪拌(かくはん)(做青(さくせい))、殺青(さっせい)、布に包んで締める団揉(だんじゅう)(包揉(ほうじゅう))、乾燥という台湾の球形烏龍茶の標準的な流れです。摘むのは芽の開いた一芯三〜四葉の成熟した葉で、茎ごと巻き込むので湯の中で葉が茎付きのまま開きます。半球状に固く締める団揉は南投(なんとう)鹿谷の凍頂烏龍(とうちょううーろん)から受け継いだもので、機械化された今も一日がかりの工程です。

高地ならではの事情もあります。日光萎凋は薄曇り程度の日差しが必要ですが、高山の茶区は午後になると霧に包まれ、晴れた日は日よけの幕を張って日差しを弱めます。酸化は軽く、仕上げの焙煎は雑味と青味・焦味(せいみ・しょうみ)を抜く低温の乾燥にとどめるので、緑色の茶葉と花の香りが残ります。火が入っていないように見えますが、低温の火入れをきちんと行わないと刈った草のような青臭さが残るので、「焙煎していない」わけではありません。

高山茶が広まってから、台湾の烏龍茶全体が「重萎凋・軽発酵」に寄ったと言われます。高山の葉は渋みが少ないので酸化を浅くしても飲みやすく、市場も緑色で清らかな香りを好んだためです。一方で、かつて8〜12時間かけた做青が2〜4時間に短くなり、酸化不足の茶が増えたという批判は台湾の茶業界にも根強くあります。茶改場の分類でも、清香型とは別に焙煎を効かせた「焙香型(ばいこうがた)球形烏龍茶」(凍頂烏龍がその代表)が立てられています。台湾の作り手の中には、意図的に酸化をやや深めにとった高山茶や、軽く炭焙煎した高山茶を作る人もいます(清香型と濃香型(せいこうがたとのうこうがた))。

高山の味ができる理由

茶改場の説明では、高山は冷涼で朝夕に雲霧に覆われ、平均の日照時間が短いため、芽葉に含まれるカテキン類などの苦渋み成分が減り、テアニン(てあにん)や可溶性窒素など甘みに関わる成分が増えます。芽葉は柔らかく葉肉が厚く、ペクチン質が多いため、湯に滑らかさと厚みが出ます。昼夜の温度差が大きいことも要因で、昼に光合成で作った糖類を、夜の低温で呼吸に使わずに蓄えるためだと説明されます。

裏返せば、高山の茶樹は成長が遅く、収量が少ない木です。年に摘める回数が少なく、斜面の茶園は機械が入らず手摘みで、道が遠いぶん運搬にも費用がかかります。高山茶が高価なのは、味の理由と同じくらい、この生産条件によります。

季節

春茶と冬茶が二大シーズンです。春茶は4月から5月にかけて標高の低い茶区から順に摘み、梨山や大禹嶺では5月下旬から6月にずれ込みます。冬茶は10月から11月に、今度は先に冷える高い茶区から順に摘みます。標高2000メートル級の茶区では年にこの二回しか摘めず、1000メートル台の茶区では夏や秋にも摘みますが、夏茶と秋茶は値が安く、飲料原料に回るか、ほかの茶に仕立てられます。近年は高山の産地で夏の葉を東方美人(とうほうびじん)風に作る試みもありますが、涼しい高地では酸化を深めるのが難しく、定着するかは未知数です。冬茶の後、冬の終わりにわずかに芽吹いた葉を摘む冬片(とうへん)は量が少なく、愛好家の楽しみになっています。

春茶は味の厚みと香りの豊かさ、冬茶は寒さで成長が止まりかけた葉の澄んだ香りが持ち味とされ、産地の茶農家には冬茶を好む人が少なくありません。

歴史

台湾の球状烏龍茶の本場は長く鹿谷の凍頂(とうちょう)でした。凍頂山は標高800メートルほどで、高山茶の時代が来るまで、台湾で標高を売りにする茶はありませんでした。

名前の由来として広く語られるのは、梨山で梨の果樹園を営んでいた陳金地(ちんきんち)が、凍頂から苗を持ち込んで標高2500メートル前後の山で茶を作り、品種も産地もばらばらだったので売るときに「高山茶」と呼んだ、という話です。伝承では1960年代のこととされ、当時の総統蒋介石(しょうかいせき)が愛飲したことで名が広まったとも言われますが、これは史料で裏付けられた話ではありません。史料上は、陳金地が大禹嶺の松露(しょうろ)茶園で果樹と茶樹を植え始めたのが1967年で、これが後に「世界で最も高い烏龍茶園」と呼ばれた茶園です。

産業としての高山茶は1980年代に始まります。1979年に米国産リンゴの輸入が自由化されて梨山のリンゴ農家が打撃を受け、退役軍人の農場である福寿山農場(ふくじゅさんのうじょう)は1980年に日本の専門家を招いて標高2500メートルで青心烏龍・武夷・鉄観音を試作し、1983年にその茶を「福寿長春茶」と名付けました。大手茶商の天仁(てんじん)は1981年に霧社(標高1600メートル前後)で茶園を開き、契約栽培を最盛期に200ヘクタールまで広げました。同じ1980年代に竹山鎮の杉林渓、信義郷と水里郷の玉山、嘉義の梅山・竹崎の茶園が次々に開かれ、1990年代には高山茶が凍頂烏龍に代わって台湾茶の看板になります。この流れの中で凍頂烏龍そのものも酸化と焙煎を軽くした清香型が主流になり、東部の台東・花蓮のような低地の産地は苦戦を強いられました(凍頂烏龍(とうちょううーろん)、紅烏龍(こううーろん))。

農業と環境の論点

高山茶は台湾の山地農業の象徴であり、同時に論争の的でもあります。高地の茶園には国有林の造林地や原住民保留地を借り受けて開かれたものが多く、茶樹は造林樹種ではないため、契約の更新や土地の返還をめぐって農家と林務当局が長く争ってきました。大禹嶺では2015年11月、裁判で回収が確定した約4.7ヘクタールの茶園の茶樹が伐採され、林に戻されました。農家側は樹齢30〜40年の茶樹の根が深く張って斜面を守ってきたと主張し、当局は水源と斜面の保全を理由にしました。

台湾全体の茶園面積は1991年から2017年までにほぼ半減しましたが、梨山や仁愛郷の高地だけは増え続け、記者の調査では力行(りっこう)産業道路沿いで150ヘクタール、台14甲線沿いで100ヘクタール以上の茶園が、法律で許された利用の限度を超えた超限利用(ちょうげんりよう)の状態にあるとされます。農業部は高山茶を台湾の精品茶と位置づけつつ、新たな開発は国土保全を踏まえ場所を選んで慎重に行い、水土保持を徹底するよう求める立場です。農家の側には、茶樹は根が絡み合って土を守るという元茶改場長の見解を支えにする声や、平地の投資家が入って開いた茶園と地元の農家が守ってきた茶園を分けて考えるべきだという声があります。この記事ではどちらが正しいかは判断せず、高山茶を飲むときに知っておく背景として書いておきます。

もうひとつの論点は産地表示です。台湾は2013年時点で年間3万トンの茶を輸入し、これは自国の生産量の2倍にあたります。ベトナムや中国産の球状烏龍茶が台湾の高山茶として売られたり混ぜられたりする問題は長く続いており、農業部は「阿里山高山茶」「杉林溪茶」「拉拉山高山茶」「合歡山高冷茶」など13の茶区に産地証明標章(地理標志(ちりひょうし))を、生産者には産銷履歴(さんしょうりれき)(トレーサビリティ)を整えてきました。とはいえ、梨山や大禹嶺のように茶園の土地区分の事情で標章や履歴の取得が進みにくい産地では名前を借りた商品が多く、産地ごとの相場を大きく下回る値段の高山茶には、産地違い・季節違い・境外茶の混合のいずれかの事情があるのが普通です。

台湾高山茶の銘柄

  • 梨山茶りざんちゃ台湾台中市和平区の梨山一帯で作られる高山烏龍茶で、標高1800〜2600メートルの茶園は台湾で最も高い。青心烏龍を清香型に仕上げ、林檎や桃にたとえられる香りと厚い甘みがあるが、生産量が少なく名前を借りた茶も多い。
  • 阿里山高山茶ありさんこうざんちゃ台湾嘉義県の阿里山一帯、標高1000メートル以上の茶園で作られる、酸化の軽い球状の烏龍茶。冷涼で霧の多い高地で育つため渋みが少なく甘く滑らかで、台湾の三大高山茶区の中で生産量が最も多い。
  • 杉林渓さんりんけい台湾南投県竹山鎮、杉の森と渓谷に囲まれた標高1500〜1900メートルの茶園で作られる高山烏龍茶。酸化を浅くした清香型で、杉を思わせる清涼感のある香りと冷たい鉱泉のような澄んだ甘さが特徴。
  • 大禹嶺だいうれい台湾中部、花蓮・台中・南投の境にある峠の大禹嶺の茶園で作られた清香型の高山烏龍茶。標高2300〜2600メートルの台湾で最も高い茶産地とされるが、2015年に主要な茶園が伐採され、名前だけを借りた茶が多く出回る。

台湾高山茶の淹れ方

沸騰したての湯で淹れる人がほとんどです。固く巻かれた葉を開かせるため、蓋碗や茶壺に器の五分の一から四分の一ほどの茶葉を入れて予熱し、1煎目は葉が開くまでやや長めに置き、2煎目以降は短く切ってから少しずつ延ばす人が多いです。煎持ちがよく、少量で長く楽しめます。洗茶(産地では醒茶と言う)はする人としない人がいて、高価な茶ほど1煎目から飲む人が多いです。台湾の茶改場が審査に使う基準は少なめの茶葉に沸騰した湯を注いで5分前後置く長めのもので、家庭でも大きめの茶壺やマグにこの割合で入れて置いておく淹れ方が普通に行われます。香りを追うなら聞香杯を使い、夏は水出しの冷泡も定番です。焙煎が軽いので、開封後は密封して冷蔵する人が多いです。

淹れ方はひとつではありません。ここでは多くの人がどう淹れているかを書いています。

関連用語

参考リンク